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夕方の星降る橋は、昼よりも古さを隠せない。斜めの光が木目を浮かび上がらせ、傷んだ部分だけがはっきり目に入る。
アルヴェは図面を手すりに広げたまま、低い声で言った。
「ここは今日中に仮補修を終わらせる。祭りまで時間がない」
対するトゥランは腕を組み、橋の入口を振り返る。
「終わらせる前に、人手が足りない。警備も誘導も足りてないまま本番なんか入れない」
どちらも間違っていない。それがいちばん厄介だった。
ヴィタノフとコスタチンは黙って床板を見ている。口を挟めば、今度は責任の押しつけ合いになるとわかっている顔だった。
サベリオの胸には焦りがあった。橋が危ないことも、人が詰まれば余計に危ないことも、もう知っている。だから二人のやり取りを聞いているだけで、喉が焼けるようだった。
「どっちも急がないとだめなんだよ!」
思わず声が出た。
アルヴェとトゥランが同時にこちらを見る。
「補修が遅れたら橋がもたないし、人手が足りなきゃ逃がせない。わかってるなら、今すぐ両方やればいいだろ!」
言いながら、自分でも乱暴だと思った。けれど止まらなかった。
「誰の責任か言い合ってる時間なんてない!」
橋の上の空気がさらに固くなる。
アルヴェが先に口を開いた。
「その両方をどう回すか決めるのが責任者だ」
「じゃあ決めてよ」
「感情で急かして決まるなら苦労しない」
トゥランも低く言う。
「現場にいる人間が怪我したら終わりだ。きれいごとで橋は立たない」
正しい言葉ばかりが並んで、余計に苦しかった。サベリオは拳を握る。言い返したいのに、未来を知っているとは言えない。言えないまま焦るから、また強い口調になる。
「じゃあ何もしないまま雨を迎えるのかよ」
その時、コスタチンがびくっと肩を揺らした。ヴィタノフは無言のまま工具を置く。
しまった、と思った時には遅い。自分の焦りが橋の上の全員へ移っていた。
結局その場は、アルヴェが補修の優先順位を決め、トゥランが必要人数を洗い直すことでいったん収まった。話としては前に進んだのに、あと味だけが悪い。
作業後、夕焼けの橋に一人残ったサベリオは、手すりに手を置いた。守りたい気持ちで口を開くたび、誰かとの距離が広がっていく。
助けたいのに、ぶつけてしまう。
木の冷たさが、ひどく情けなく感じた。
#成り上がり
#死に戻り
#ハッピーエンド
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