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椅子に腰を下ろすなり、男子生徒は机にノートを置いて大きく息を吐いた。
「……もう、疲れました。頑張ってるのに全然結果が出ないんです」
蓮司はペンをくるくる回しながら、そのノートを横目で覗く。
びっしりと数式やメモが書き込まれているページ。
「へぇ。これだけ詰め込んで“頑張ってない”って言ったら、オレのノートなんて白紙同然だな」
「いや、本当に必死にやってるんです。でも……テストでは全然点が伸びなくて。みんなに追いつけない」
蓮司は軽く肩をすくめた。
「追いつけないのは、まだスタート地点がちょっと違うだけだろ。人によって得意不得意あるんだからさ」
「……でも、周りはちゃんと結果を出してるのに、自分だけダメだって思うと」
「わかるよ。オレも、部活でそう思ったことある。走っても走っても、前にいるやつに追いつけない。でもな……気づいたんだ。比べてる限り、苦しいだけだって」
男子生徒は顔を上げる。
「……じゃあ、どうすればいいんですか」
「比べる相手を変えるんだよ。昨日までの自分に、な」
蓮司はペンを止めて、真っ直ぐに言った。
「今日ノートに書いた分だけ、昨日の自分より進んでる。それで十分。点数だけが“努力の証明”じゃないんだから」
男子生徒は少し黙り込み、それから小さく笑った。
「……そう言われると、ちょっと救われる気がします」
「おう。救われた分、オレにジュース一本な」
「……やっぱり最後はそこですか」
「当然だろ。相談料だ」
男子生徒は呆れながらも笑い、ノートを閉じて席を立った。