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日下部の相談室2

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日下部の相談室2

92 - 第92話 必要とされていない気がする

2026年01月30日

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「今日は、何の話にする?」


日下部がそう言うと、相談者は少し間を置いた。


「……自分がいなくても、困らない感じです」

「誰が?」

「みんな、です」


即答ではなかった。


「家族も、友達も」

「具体的な出来事は?」

「ないです」


それから、ゆっくり言葉を探す。


「家では、

自分が黙ってても会話が進むし」

「うん」

「学校でも、

休んだら“大丈夫?”とは言われるけど」

「けど」

「次の瞬間には、

もう普通に回ってる」


日下部は頷くだけで、評価しない。


「自分が抜けた穴が、

すぐ塞がる感じ?」

「そうです」


相談者は指を絡めた。


「だから、

行けなくなっても、

余計に戻りづらくなる」

「“必要とされてない”って感覚が、

強くなる?」

「はい」


少し笑ってしまう。


「行かなくても問題ないなら、

行く意味あるのかなって」


日下部は静かに言った。


「それ、

性格の影響もあると思う」

「性格?」

「目立たないようにする癖」


相談者は、はっとした顔をする。


「空気を乱さないようにしてる人ほど、

いなくなっても気づかれにくい」

「……」

「でもな」


日下部は、少し間を取った。


「“必要とされてない”と

“依存されてない”は違う」


相談者が顔を上げる。


「依存されてない?」

「うん。

いなくなったら崩れる関係だけが、

必要ってわけじゃない」


相談者は、納得しきれないまま黙る。


「友達ってさ」

「はい」

「“一緒にいない時間があっても続く”

タイプもある」

「……それ、

自分には分からないです」

「今はな」


日下部は続ける。


「不登校になると、

“役割”が消えるから」

「役割」

「クラスの中での立ち位置」


相談者は小さく頷いた。


「役割がなくなると、

自分そのものも消えた気になる」

「まさに、それです」


日下部は、少しだけ声を落とす。


「でも、

人に必要とされる価値って」


相談者を見る。


「“使われてるかどうか”じゃない」

「……」

「今は、

誰かの役に立つ前に、

自分が生き延びる段階」


相談者は、ゆっくり息を吐いた。


「それでも、

何もしてない感じがして」

「してるよ」

「何を?」

「必要とされない場所から、

ちゃんと離れてる」


相談者は驚いたように目を瞬いた。


「それ、

一番難しい選択だから」


少し沈黙が流れる。


「……じゃあ」


相談者が言う。


「今は、

誰にも必要とされなくてもいいんですか」

「“今は”でいい」


日下部は頷いた。


「自分に必要とされる時間を、

先に作ろう」

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