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朝の教室に、ほぼ同時にスマホの通知音が連なった。
 「え、なにこれ」
「やば、爆笑」
 数秒後、ざわつく声があちこちで弾ける。
 「おい見て、クラスLINEのアイコン!」
 誰かがスマホを掲げる。そこに映っていたのは、大地と隼人が肩を寄せて笑っているツーショット写真。
文化祭の帰り、無邪気に撮った一枚だ。
 「ははっ、最高じゃん!」
 大地が一番に吹き出した。
 「これ、記念にこのままでもいいんじゃね?」
 悪びれず、むしろ面白がってみんなにスマホを見せびらかす。
 「おい!誰だよ勝手に!」
 隼人が慌ててツッコミ、机を軽くドンと叩く。
口では怒鳴りながらも、口元がほんのわずか緩んでしまう。
 (……まあ、変な写真じゃないし。大地と一緒、嫌じゃないし)
 心のどこかでそんな考えがちらりと浮かび、隼人は自分で自分にむっとする。
 そのとき、背後から軽い声。
 「俺が撮ったんだけど? いいアングルだろ」
 振り返ると柊がニヤリと笑い、スマホをひらひらさせていた。
 「柊、お前か!」
 クラスの視線が一斉に集まり、柊は肩をすくめてさらに笑みを深くする。
 隼人は思わず眉をひそめた。
 (……柊が撮ってたのか。なんでわざわざ大地との写真を)
 胸の奥がわずかにチクリとする。
自分でも理由のわからない、けれど確かにそこにある小さなざらつき。
 「決まりだな、これ放置!」
 大地が満面の笑みで宣言する。
 「待て待て待て、削除しろって!」
 隼人が慌ててスマホを取り出すと、クラス中がさらに盛り上がった。
柊は「人気者はつらいなぁ」と涼しい顔。
 結局、隼人がアイコンを戻すまで笑い声は止まらなかった。
でも画面を閉じる瞬間、心の奥底で
 ――ちょっと惜しい。
 そう感じてしまったことを、隼人は誰にも言わない。