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そして二日後、出社した奈緒はいつもと違う空気を感じていた。


エレベーターを待っている間や他の部署へ行った時、そして廊下を歩いている時、奈緒は自分に注がれる視線に気付いた。

最初は気のせいかと思ったが、視線は徐々に増えていく。

それは、前の会社で感じていた視線とよく似ていた。好奇心に満ちた目だ。

しかし奈緒は考え過ぎかもしれないと思い、なるべく気にしないようにして仕事に集中する。


その日の昼休み、奈緒は秘書課の三人で外の店へ食べに行った。

そして食事を終えて会社に戻ると、やはり奈緒に向けて大勢の視線が突き刺さる。どうも気のせいではないようだ。



(なぜこんなに見られているの?)



その視線は、奈緒が頼まれた書類を総務部に持って行った時にも感じた。



(もしかしたら私の身なりがどこか変とか?)



気になった奈緒は、秘書室へ戻る途中化粧室へ寄り、鏡で全身をチェックした。

しかし特におかしいところはないようだ。



(やっぱり気のせいなのかな?)



スッキリしない気持ちのまま、奈緒は秘書室へ向かった。


秘書室に入ろうとした時、ちょうど中から人事部の女性が出て来た。

女性は奈緒が初出勤した朝、人事部のフロアにいた女性だ。



「麻生さんお疲れ様! 頑張ってるわね」

「お疲れ様です。はい、なんとか……」



女性はニッコリと微笑んでからエレベーターへ向かったので、奈緒も秘書室へ入る。

入るとすぐにさおりの声が飛んできた。



「奈緒ちゃん、今人事部の人から聞いたんだけど、なんか社内で奈緒ちゃんの噂が広まってるんだって!」

「噂?」



すると恵子が説明する。


「気を悪くしないで聞いてね。その噂話っていうのが、奈緒ちゃんが前の会社で婚約者に二股をかけられた挙句、婚約者は二股相手と旅行中に交通事故で死んだっていう内容なの。バカバカしいよねー、一体誰がこんな噂流してるんだかっ」

「…………」



奈緒は思わず絶句する。誰が? 一体なぜ? それにどうしてその事を知っているのだろうか?



「なーんかすっごい悪意を感じるよねー。でもさぁ、そんなドラマみたいな話なんてあるわけないじゃん、絶対デタラメよー」

「私もものすごい悪意を感じます。それに噂を流した人は、何で奈緒ちゃんの前の会社の事を知っているの?」

「奈緒ちゃん、私達以外で社内に親しい人っている?」

「……いません」

「じゃあ一体だれなのよー? あっ、ちなみに私はそんな噂流してないからね」

「もちろん私だってそんな事しませんよっ」



慌てて否定する二人に向かって奈緒が言った。



「もちろんお二人の事は信頼しています。でも誰が?」

「ちょっとあまりにもひど過ぎるから深山さんに対処してもらった方がいいよ。だって全部デタラメなんでしょう?」

「…………」



奈緒が否定しないのを見て、思わず二人は顔を見合わせる。

そこで奈緒は諦めたように口を開いた。



「噂の内容は……本当なんです……」

「「えっ?」」



二人は同時に目を見開いた。

そこで奈緒はフーッと息を吐いてから話し始めた。



「実は前の職場に結婚を約束した人がいたんです。でも彼は交通事故で亡くなってしまって……」

「「…………」」



あまりの衝撃に、二人は返す言葉もなかった。



「彼が事故を起こした時、助手席には同じ会社の女性が乗っていたんです。で、彼女も亡くなりました」

「「!」」



さらなる衝撃に二人はハッと息を呑み、秘書室内がシーンと静まり返ってしまう。

その状況に耐えられなかった奈緒は、あえて明るくおどけて言った。



「もう全て済んだ事ですから! でもなぜその事を知っている人がいるんだろう? フフッ、参っちゃいますね……」



奈緒は無理してひきつった笑顔を浮かべたが、すぐに涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

奈緒の心はもう既に限界に達していた。


折角何もかも忘れて心機一転新しい環境でやり直そうと思っていたのに、いきなりのこの仕打ちだ。

張り詰めていた奈緒の心は、この時プツッと音を立てて切れてしまった。


その時、さおりがカツカツとヒールの音を響かせて奈緒に近付いた。そして奈緒をギュッと抱き締める。



「我慢しなくていいのよ……」



さおりの声は母性に溢れていた。その母のような優しさに触れた瞬間、奈緒の泣き声は号泣へと変わる。



「うぅっっ……うっっ……わあぁぁーーーんっっ…..」



こらえていた思いが一気に溢れ出してくる。

今までどうする事も出来なかった感情が、まるで堰き止められていたダムの水のように一気に激しく流れ落ちる。

奈緒はさおりにしがみつきながら激しく泣き続けた。

そんな奈緒の背中を、さおりはトントンと優しく叩く。

その傍で、恵子が心配そうに二人を見つめていた。



二人に見守られながら思い切り泣く事で、奈緒は今まで表に出せずにいた暗く淀んだ感情を、涙と共に一気に身体の外へ吐き出していった。

銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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コメント

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名取美紗ろくな男しか付かないのかしら。即解雇しろって💧

ユーザー

クソ女やったな💢バカ男と尻軽バカ女解雇せよー!!何がいつものホテルじゃー!省吾さん、天罰を!!

ユーザー

事実でも 奈緒はな~んも 悪くない 事実でも 漏らせばアウト 名取美沙 すぐ流す おつむの弱い 名取美沙 ブーメラン 特大お見舞い 名取美沙 バカ男 ちょうどお似合い 名取美沙 バカ男 KDSD 解雇せよ

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