テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#読み切り
相談者は椅子に座るとすぐ言った。
「グループ抜けたい」
蓮司は頷く。
「理由」
「楽しくない」
少し沈黙。
「仲悪い?」
「別に」
「嫌われてる?」
「たぶん違う」
「じゃあ」
相談者は少し考える。
「合ってない」
蓮司は続きを待つ。
「ノリとか」
「うん」
「話とか」
「うん」
「なんかずっと合わせてる」
机を見る。
「笑うとこじゃないのに笑う」
「ある」
「興味ない話でも聞く」
「ある」
相談者は小さく笑う。
「気づいたら疲れてる」
沈黙。
「じゃあ抜ければいい」
蓮司が言う。
「それ」
相談者はすぐ返す。
「それができない」
「理由」
「一人になる」
部屋が少し静かになる。
「そのグループ抜けたら」
相談者は言う。
「昼どうするんだろって思う」
「席とか?」
「そう」
「移動教室とか」
「そう」
「放課後とか」
「そう」
机を指で叩く。
「別に仲いいわけじゃない」
「うん」
「でも」
「でも?」
「ゼロになるの怖い」
蓮司は頷く。
「それ普通」
相談者は顔を上げる。
「普通?」
「グループって」
蓮司は言う。
「友情じゃなくて“居場所”のこと多い」
相談者は黙る。
「楽しいからいる人もいる」
「うん」
「でも」
「?」
「一人回避でいる人、結構いる」
相談者は少し笑う。
「安心した」
沈黙。
「でもさ」
「うん」
「俺がいなくても成立するんだよ。
そのグループ」
「うん」
「俺いなくても回る」
少し間。
「気づいた」
「どうやって」
「一回休んだ」
「うん」
「何も変わってなかった」
相談者は笑う。
「当たり前なんだけど」
「刺さるな」
「刺さった」
沈黙。
「じゃあ聞く」
蓮司が言う。
「そのグループ」
「うん」
「お前がいて良かった瞬間ある?」
相談者は考える。
長い。
「……たまにある」
「例えば」
「場が静かな時」
「うん」
「俺が話す」
「うん」
「ちょっと笑う」
蓮司は頷く。
「じゃあ完全に無意味ではない」
相談者は肩をすくめる。
「でも替えはいる」
「大体の人そう」
沈黙。
「グループって」
蓮司は続ける。
「“特別な誰か”じゃなくても成立する」
相談者は黙る。
「だから」
「?」
「抜けても世界は回る」
相談者は苦笑する。
「残酷」
「でも」
蓮司は言う。
「お前の人生も回る」
相談者は少し止まる。
「……あ」
「そのグループ抜けたら」
「うん」
「一人の時間増える」
「増える」
「でも」
「?」
「それで初めてできる関係もある」
沈黙。
「すぐじゃないけどな」
「うん」
相談者は立ち上がる。
「たぶん俺」
「うん」
「まだ抜けない」
「それでいい」
「でも」
ドアの前で振り返る。
「“抜けてもいい”って分かった」
蓮司は頷く。
「それが一歩」
ドアが閉まる。
グループにいる理由は、
必ずしも「仲がいい」ではない。
ときどきそれは、
ただ「一人にならないため」だったりする。