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ruruha
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きゆう
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📩 相談
高校1年・Aさん
私は、人から褒められると嬉しいはずなのに、だんだん苦しくなります。
この前、英語のテストでクラスの上位に入りました。もともと英語は好きだったし、今回は自分でもよくできたと思っていました。
友達に点数を聞かれて答えたら、「え、すごいじゃん。次も教えてよ」と言われました。別の子にも「Aって英語できるんだね」と言われて、先生からも授業中に褒められました。
最初は嬉しかったです。頑張ってよかったと思いました。
でも、次のテストが近づくにつれて、だんだん嫌になってきました。
次もいい点を取らなきゃいけない気がするんです。前回より低かったら、あのとき褒めてくれた人をがっかりさせるかもしれない。実は大したことなかったんだと思われるかもしれない。
今までは、英語が好きだから勉強していました。でも、今は勉強するたびに「次もできるようにしなきゃ」と考えてしまいます。
この前、友達に「今回も期待してるよ」と言われました。冗談っぽい言い方だったし、プレッシャーをかけるつもりはなかったと思います。
それなのに、すごく嫌でした。
「そんなに期待しないで」と言いたかったけど、せっかく褒めてくれたのに、そんなことを言うのも感じが悪い気がして、笑ってごまかしました。
最近は、テストの点が下がったときのことばかり考えています。
褒められなければ、こんなに気にしなくて済んだのにと思うこともあります。でも、褒められたときは確かに嬉しかったんです。
自分から頑張ったことなのに、誰かに認められた途端、好きだったことが義務みたいになってしまうのが嫌です。
どうしたら、期待に応えなきゃと思わずにいられるんでしょうか。
遥「……嬉しかったのに、あとから嫌になっちゃうんだな」
蓮司「褒められたことが嫌だったというより、褒められたことで次の条件が増えたように感じてるんじゃないか」
日下部「前は自分が好きで勉強していた。でも今は、周りから褒められた自分を維持するために勉強しているような感覚になってるのか」
遥「うん……。一回できたら、次もできると思われるんだよな。できなかったときのことまで、先に考えちゃう」
蓮司「実際、友達はそこまで考えてない可能性も高いけどな。『期待してるよ』って言っただけで、Aが次に何点取るか、毎日気にしてるわけじゃないだろ」
遥「それはそうかもしれない。でも、言われたほうは気になるんだよ」
蓮司「そう。相手がどれくらい本気で期待してるかとは別に、Aの中でその言葉が重くなってる」
日下部「一度いい結果が出ると、次も同じようにできると思われる。それが嫌なんだろうな」
蓮司「それだけじゃないかもな。次に失敗したら、今まで褒めてくれた人の見る目が変わると思ってるんじゃないか」
遥「……ああ」
蓮司「Aにとっては、今回の点数が一回の結果じゃなくなってる。『自分は英語ができる人間だ』って周りに認められた証拠になってる。だから次に点数が下がったら、点数だけじゃなく、その評価まで失う気がする」
日下部「でも、今回の結果がよかったことは変わらない。次の点数がどうなるかで、今回頑張ったことまでなくなるわけじゃないだろ」
遥「……そうなんだけど、次に失敗したら、前に褒めてくれた人にも申し訳なくなるのかもしれない」
蓮司「誰かが勝手に期待したことまで、全部引き受けようとしてるんだよな」
日下部「期待に応えたいと思うこと自体は悪くないと思う。でも、それでAが好きだったことを楽しめなくなってるなら、一度立ち止まってもいい」
遥「でも、褒めてくれた人のことを考えたら、頑張らなきゃって思うのは普通じゃない?」
蓮司「普通かどうかは、今のAにはあまり関係ないだろ。実際に苦しくなってるんだから」
遥「……うん」
蓮司「それに、褒められたからって、次も同じ結果を出す約束をしたわけじゃない。友達はAの今回の点数を見て、すごいと思った。それだけだろ」
日下部「Aが次に何点を取るかまで、約束させられたわけじゃないからな」
遥「でも、『期待してる』って言われたら、約束したみたいに感じるんだと思う」
蓮司「期待って、受け取った側が勝手に契約書にしてしまうことがあるんだよな」
遥「契約書……?」
蓮司「『褒めてくれたんだから、次も結果を出します』『期待してくれたんだから、がっかりさせません』って、自分の中で勝手に条件を追加してる。相手はそんな契約を求めてないかもしれないのに」
日下部「Aが自分で決めた条件なら、自分で見直すこともできる。期待に応えたい気持ちがあっても、無理なところまで約束する必要はない」
遥「……自分で勝手に約束したことにしてるのか」
蓮司「そういう部分はあると思う。もちろん、期待に応えたいと思うのは自由だ。でも、応えられなかったら裏切り者になる、みたいに考え始めたら苦しいだろ」
遥「俺、褒められたときって、どう返せばいいのか分からなくなることがある」
日下部「どうして?」
遥「嬉しいって言ったら、もっと期待される気がするし。そんなことないって否定したら、褒めてくれた相手に悪い気がするし……。どう答えても、次のことまで考えちゃう」
蓮司「じゃあ、『ありがとう』で終わらせればいいんじゃないか」
遥「……それだけで?」
蓮司「それだけで。褒められたことへの返事と、次に何をするかは別の話だろ。『ありがとう』って言ったから、次も頑張りますって約束したことにはならない」
遥「……そっか」
日下部「嬉しかったなら、嬉しかったでいい。次も同じ結果になるかどうかは、また別に考えればいいんだ」
遥「でも、次に結果が悪かったら、周りの反応が変わるかもしれない」
蓮司「変わるかもしれないな。『今回は残念だったね』って言われるかもしれないし、何も言われないかもしれない。中には、前より評価しなくなる人もいるかもしれない」
遥「……うん」
蓮司「そこまで全部否定するつもりはないよ。実際、結果がよかったときだけ近づいてくる人もいるからな。でも、そういう可能性があるからって、Aがずっといい結果を出し続けなきゃいけないわけじゃないだろ」
日下部「もし点数が下がったことで態度を変える人がいたら、その人がAをどう見ていたのか、そこで分かることもある。ただ、それを恐れて好きなことまで嫌いになるのは、もったいないと思う」
遥「……好きだったのに、嫌いになっちゃうのは嫌だよな」
蓮司「Aは、英語が好きだったんだろ。だったら、次のテストで何点取るかだけじゃなくて、英語の何が好きだったのか、少し思い出してみてもいいんじゃないか」
遥「例えば?」
蓮司「問題を解くのが楽しかったとか、知らない単語が分かるようになるのが嬉しかったとか。点数以外にも、好きだった理由はあったはずだろ」
日下部「勉強する理由が、周りの期待だけになってしまったら、苦しくなるのも無理はない。自分が楽しいと思っていた部分を、もう一度大切にしてみればいい」
遥「……でも、好きだった理由を思い出しても、期待されてることは変わらないよな」
蓮司「変わらないよ。周りの期待を消すことはできないからな」
遥「……じゃあ、どうするの?」
蓮司「期待がある状態で、自分がどうしたいか考えるんだよ。期待をなくすことばかり考えてたら、周りが何も言わなくなるまで待つことになるだろ」
日下部「期待されても、そのとおりにするかどうかはAが決めていい。応えたいと思うなら頑張ればいいし、今は疲れているなら休んでもいい」
遥「……期待されてるのに、休んでもいいのかな」
日下部「休まないと続けられないなら、休んだほうがいいだろ。周りの期待を満たすために、Aが好きなものを続けられなくなったら本末転倒だ」
蓮司「それに、頑張ることと、結果を保証することは違うからな。勉強したからって、毎回いい点が取れるとは限らない。体調もあるし、問題との相性もある」
遥「……そうだな」
蓮司「Aができるのは、今の自分にできることを考えるところまでだろ。結果まで保証しようとするから、次のテストが来る前から苦しくなる」
遥「でも、頑張ったのに結果が出なかったら、やっぱり落ち込むと思う」
日下部「それは落ち込んでいいと思う。頑張ったことがあるなら、悔しいだろうしな」
遥「……落ち込んでもいいんだ」
日下部「もちろん。ただ、点数が悪かったときに、周りをがっかりさせた自分は駄目だ、というところまで広げなくていい」
蓮司「結果が悪くて悔しいのと、期待に応えられなかった自分には価値がないと思うのは、話が違うからな」
遥「……期待に応えられなくても、褒められたことまでなくなるわけじゃないんだよな」
蓮司「そういうこと。今回の点数がよかったのは事実だし、次に点数が下がったら、それも事実。都合のいいほうだけを自分の実力だと思わなくていい」
日下部「うまくいったときの自分も、うまくいかなかったときの自分も、どちらも同じ人間だからな」
遥「……それ、頭では分かるけど、実際にそう思えるかは分からないな」
蓮司「すぐに思えなくてもいいだろ。少なくとも、次に点数が下がったとき、自分のことを全部否定する前に、今回の相談を思い出せばいい」
遥「……うん」
日下部「それと、友達に『期待してるよ』って言われたら、必ずしも『頑張るね』って返さなくてもいい。『ありがとう。次もどうなるか分からないけどね』くらいでもいいんじゃないか」
蓮司「そうだな。相手の言葉を全部引き受ける返事じゃなくても、感謝は伝えられる」
遥「……そういう返し方もあるんだな」
蓮司「Aは、褒められたことを嫌いにならなくてもいいし、期待してくれた人を嫌いになる必要もない。ただ、自分が背負う量は自分で決めればいい」
遥「……好きだったものを、また好きなままでいられたらいいな」
日下部「そのために、少し肩の力を抜いてもいいと思う」
遥は相談文を閉じた。
褒められたことが嬉しい。それは嘘じゃない。
でも、嬉しかったからといって、その喜びをずっと証明し続けなければならないわけではない。
遥はそう考えて、少しだけ手元の紙を整えた。
🗝 三人からのことば
遥「褒められたときに嬉しかったなら、その気持ちは大事にしていいと思う。でも、嬉しかったことを、次も同じ結果を出さなきゃいけない理由にしなくてもいい。前にできたことが、次も必ずできるとは限らないし、できなかったからって、前に頑張った自分まで嘘になるわけじゃないから」
蓮司「褒められた瞬間に、自分で勝手に次の約束まで作るなよ。相手は今回の結果をすごいと思っただけかもしれない。期待に応えたいなら応えればいいけど、毎回その期待を満たす義務があるわけじゃない。おまえが好きだったものまで、他人の評価に明け渡す必要はないだろ」
日下部「頑張った結果が出れば嬉しいし、出なければ悔しい。それは自然なことだと思う。ただ、結果が出るたびに、自分の価値まで決め直す必要はない。好きなことを長く続けたいなら、頑張る日だけじゃなく、休む日も自分で選べるようになってほしい」
相談室を閉める時間になっても、蓮司は帰ろうとしなかった。
机の端に置かれた小テストを眺めている。
日下部「何見てんだ?」
蓮司「この前の英語。返ってきたやつ」
遥「蓮司も英語のテスト、受けたんだよな」
蓮司「当たり前だろ。俺だけ受けなくていいわけないじゃん」
蓮司は答案をひっくり返した。点数は悪くない。普段の蓮司なら、軽く笑って終わらせるような結果だった。
日下部「十分いい点だと思うけど」
蓮司「まあな」
それだけ答えて、答案を鞄にしまおうとする。
遥「……何かあった?」
蓮司「別に。次、もうちょい上げられるかなと思っただけ」
日下部「上げたいなら勉強すればいいだろ」
蓮司「そういう話なんだけどさ」
蓮司は笑った。
蓮司「一回いい点取ると、次も取れる気がするじゃん。で、次も取れたら、今度はそれが普通になる。前なら喜んでた点数でも、だんだん何とも思わなくなるんだよな」
遥「……それ、嬉しくなくなるの?」
蓮司「嬉しくないわけじゃない。ただ、前と同じくらいじゃ足りなくなる」
蓮司は答案の角を指で揃えた。
蓮司「自分で勝手に上を目指してるだけなのに、いつの間にか、そこまで行けないと駄目みたいになってる」
日下部「自分で決めた目標なら、変えてもいいだろ」
蓮司「そうなんだけどな」
返事は軽かった。
けれど、答案を鞄にしまうまで、蓮司はしばらく指先で紙の端を弄んでいた。
遥は何か言おうとして、やめた。
さっきの相談者に向けた言葉を、そのまま蓮司に渡すことはできなかった。
自分で勝手に決めた条件なら、自分で見直せばいい。
そう言うのは簡単だ。
でも、自分で作った条件ほど、破るのが難しいこともある。
蓮司は鞄のファスナーを閉めると、いつもの顔で立ち上がった。
蓮司「帰ろうぜ。腹減った」
日下部「おまえ、さっき購買でパン食ってただろ」
蓮司「別腹」
日下部「何の別腹だよ」
遥は小さく笑った。
蓮司も笑い返した。
その話は、そこで終わった。
けれど、帰り道で蓮司が何度も鞄の中の答案を確かめていたことを、遥は気づいていた。
蓮司自身も、たぶん気づいていた。
それでも、何も言わなかった。
コメント
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うわあ、この話、すごく心に残りました……。Aさんの「褒められたら次も同じ結果を出さなきゃ」って感覚、すごく共感します。本人は嬉しかったのに、それが義務に変わっちゃうもどかしさが丁寧に描かれてました。蓮司が「ありがとうで終わらせていい」って言ったところ、ああ、そういう返し方もあるんだって目から鱗でした。最後に蓮司自身も同じ悩みを抱えてるのがまた切ないですね……。好きだったものを好きなままでいたい、そのために肩の力を抜いていい、って日下部の言葉が沁みました🍀