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7
るしゅ
昼休み。教室の空気がざらついていた。机を寄せ合った数人のグループの中心に、遥が立たされている。
彼の席の周りだけが、ぽっかりと空白のように広がっていた。
笑いをこらえる気配、スマホを構える手、無邪気な残酷さの匂い。
「なあさ、思ったんだけど」
誰かが言った。
「遥ルール作らね? どうせいるなら、退屈しないようにしてもらおうよ」
教室のあちこちから笑いが起きた。
“ルール”という言葉が、すでにその場の遊びになっていた。
「まずさ、話しかけられたら五秒以内に返事ね」
「無視したらアウト。アウトになったら次の日“土下座”で授業」
「あと、あいづち禁止。“うん”とか“はい”とか言うと減点」
「意味わかんねえ」
「いや、そいつ普段から無言じゃん」
「だからだよ。無言でいたら減点されるルールとか可哀想だろ?」
遥はただ、立っていた。
机の影が床に落ちて、足の震えがそこに映っていた。
逃げ場はない。
教師もいない昼の教室は、閉じた世界のように狭い。
「あと何かある?」
「うーん、“LINE三分以内ルール”も入れよ。どこにいても」
「いいね。あ、あと“呼ばれたら必ず笑顔”ルール」
「“笑わなかったら罰ゲーム”もありだな」
「罰は?」
「そうだな……昼休みに“今日の反省”を朗読とか?」
机を叩く音。笑い声。スマホのシャッター。
どれも、遥の体を縛る鎖の音に聞こえた。
「おい、聞いてんの?」
視線が突き刺さる。
笑いを含んだ声が、ゆっくりと耳に届く。
「ルール、ちゃんと覚えとけよ。破ったら“お前が決められる側”だから」
遥は小さくうなずいた。
喉の奥に鉄の味が滲む。
口を開こうとしても、声が出ない。
笑わなければいけないのに、頬が引きつる。
その引きつりを見て、誰かがまた笑った。
「いい顔すんなぁ、“ルール守る顔”だな」
昼休みの鐘が鳴っても、笑いは消えなかった。
机に戻るとき、背中に感じたのは人の視線ではなく――
“自分を人間扱いしていない世界の重み”だった。
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