テラーノベル
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教室の空気が、入った瞬間に鋭く締まった。結城の目が遥を捉え、その視線は刃のように冷たい。
昨日、弟が遥と会ったことが、結城の胸で暴れまわっている。
「お前……弟に関わるんじゃねえよ」
結城の声は低く、唾を吐くように響いた。
周囲のクラスメイトたちが、その言葉に合わせるように口を開く。
「弟がこんなやつと話してんの、信じられない」
「結城の弟が騙されるかと思うと吐きそう」
「なんで弟に近づくんだよ、気持ち悪い」
次々と声が重なり、遥の胸に突き刺さる。
加害者は結城だけではない。数人が自然と結城の怒りを受け継ぎ、笑いながら声を合わせる。
「弟のこと舐めてんのか」
「なんでお前に関わらなきゃいけねえんだよ」
「このクラスにいて欲しくない」
遥は体を小さくし、机を握りしめる。
言い返す力も、逃げる力も、心のどこにも残っていない。
ただ、弟が絡んだことを理由に、人格ごと否定される痛みが胸を押し潰す。
「……ごめん……」
声を出すと、すぐさま誰かが鼻で笑う。
「ごめんじゃねえよ、弟を巻き込むな」
「謝ったところで許されるわけねえだろ」
「お前に関わる資格なんてない」
結城の冷たい視線は、弟のことを思うだけで烈火のように燃え、遥を徹底的に追い詰める。
他の加害者たちはその空気に乗り、言葉や視線、軽い肘打ちや肩への圧迫で、身体も心も痛めつける。
遥は息を詰め、手が震える。
「……もう……」
声がかすれ、涙がこぼれそうになるが、それさえも笑いの種になる。
「泣くなよ、結城の弟に迷惑かけたくせに」
「情けないやつ」
「弟がかわいそうすぎる」
教室中が一体となり、遥の存在そのものを玩具のように扱う。
弟の名が出るたびに、胸に刺さる言葉が増える。
逃げることもできず、ただ痛みと屈辱だけが残る――誰も助けてはくれない。
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𝕡𝕚−𝕞𝕒𝕟𝕟
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