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おぼしずのしず
268
𝐋𝐢𝐜𝐡𝐭
1,193
「使えるらしいよ」
その一言で、次が決まる。
放課後、知らない番号から呼び出し。
断る理由は、もう残っていない。
校舎の外。
他校の制服。
人数が多い。多すぎる。
「これ?」
「思ったより普通だな」
品定めの目。
値札を付けるみたいに。
「耐久いけたんだって?」
「二時間?」
笑いが起きる。
「じゃ、信用できるじゃん」
「途中で壊れないってことだろ」
誰かが説明する。
「嫌って言うけど、続くタイプ」
「一番助かるやつ」
遥は首を振る。
「違う。受け入れてない」
即、被せられる。
「はい、訂正入った」
「でも来てる」
「来た=同意」
「前のとこでもさ、結局最後までいたんだろ?」
「逃げなかった。暴れなかった。優等生」
言葉が、縄になる。
「おすすめ理由、これな。反抗するフリして、ちゃんと役目は果たす」
別の学校の誰かが、面白そうに言う。
「抵抗ある方がさ、盛り上がる」
「無言より、ずっといい」
遥は喉を鳴らす。
「……違う。嫌だから言ってる」
「うんうん。その顔な」
「嫌だけど、やる顔」
笑い声。
知らない笑い方。
知らないノリ。
「名前は?」
「いらなくね?」
「これでいいだろ」
「“例のやつ”」
人じゃない呼び方が、次々増える。
「貸してもらった」
「回していい?」
「試用期間」
誰かが言う。
「大丈夫。前の連中も保証してる」
「壊れない、文句言うだけ」
遥の足が止まる。
「行かない」
一瞬、静まる。
「……あ、拒否」
「じゃ、罰だ」
理屈が完成するのが、早すぎる。
「拒否=手間増やした。迷惑」
「説明コスト分、払え」
誰かが囁く。
「ちゃんと拒否したね。偉い」
「だから、ちゃんと酷くなる」
遥は歯を食いしばる。
(わかってほしかっただけ)
(同意じゃないって)
(それだけ)
「ほら、確認できた?」
「“嫌”って言えた。目的達成じゃん」
「じゃ、次」
次。
次の学校。
次の集団。
おすすめは連鎖する。
「いい素材」
「空気読める」
「壊れない」
評価だけが増えていく。
遥は思う。
(抵抗した)
(拒否した)
(それで終わると思ってた)
でも現実は、
拒否した事実が、
“長く遊べる証明”として
拡散されていくだけだった。
コメント
1件
第33話、読ませていただきました……。 嫌って言ってるのに、拒否したことすら“遊べる証明”にされるの、すごく苦しかったです。「言葉が、縄になる」って表現、ゾッとするほど刺さりました。 遥の「違う。受け入れてない」が誰にも届かないもどかしさ。抵抗しても逆に利用されちゃうの、現実でありそうで怖いです。 ruruhaさんの書く“理不尽の重なり”は、いつも心臓の奥に響きます🥀