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コメント
1件
読ませていただきました。 蓮司さんの「昔の友達は嫌な部分が更新されないからキラキラ見える」という言葉、とても腑に落ちました。確かに、今の友達って面倒なところも日々見えちゃうから、どうしても昔の方が輝いて見える瞬間がありますよね。でも最後の「人生の一部だったというだけ」で良いんだよ、って優しくほどいてくれる感じがして、読後とてもあたたかい気持ちになりました。記憶を「編集」って表現するセンス、好きです。
ドアが開く。
相談者は席に座ると少し考えてから言った。
「たまにさ」
蓮司は椅子を引く。
「うん」
「昔の友達思い出すんだよな」
蓮司は座った。
「最近会った?」
「全然」
「連絡取ってる?」
「取ってない」
「じゃあ急に思い出すのか」
相談者は頷く。
「本当に急に」
少し間。
「何きっかけ」
「分からない」
「曲とか」
「ある」
「場所とか」
「ある」
「匂いとか」
「ある」
蓮司は軽く頷いた。
「人間そういうの多い」
相談者は黙る。
「でも別に戻りたいわけじゃないんだよ」
「うん」
「会いたいかって言われると微妙」
「うん」
「なのに思い出す」
少し沈黙。
「多分な」
蓮司は机に肘をついた。
「友達本人というより、その頃の自分ごと思い出してる」
相談者は顔を上げる。
「その頃の自分?」
「そう」
間。
「小学校の友達思い出す時」
「うん」
「小学校の自分もセットで出てくるだろ」
相談者は少し考える。
「確かに」
「中学なら中学」
「うん」
「その時考えてたこととか」
「うん」
「空気とか」
「うん」
「そっちも一緒」
少し静かになる。
「じゃあ友達だけじゃないのか」
「記憶の入口が友達なだけ」
相談者は黙る。
間。
「何か不思議だな」
「人間の記憶は結構雑だ」
相談者は少し笑った。
「雑なんだ」
「かなり」
少し沈黙。
「あとさ」
「何」
「思い出す時って、大体いい記憶じゃない?」
相談者は少し考えた。
「まあ、嫌なことより楽しかったことの方」
蓮司は頷く。
「脳が勝手に編集してる」
相談者は吹き出した。
「また編集か」
「昔の記憶は特にな」
間。
「実際は嫌なこともあったはず」
「あった」
「でも今は薄い」
「薄い」
「楽しかった方だけ残りやすい」
少し静かになる。
「だから戻りたくなる?」
「戻りたいというより」
蓮司は少し考えた。
「安心したいんだろうな」
相談者は黙る。
「安心?」
「昔ってもう終わってるだろ」
「うん」
「結末知ってる」
「うん」
「だから安全」
間。
「未来は分からない」
相談者は黙る。
「でも過去は分かる」
「確かに」
「だから疲れてる時ほど過去思い出すやついる」
少し沈黙。
「じゃあ未練とかじゃない?」
「場合による」
相談者は顔を上げる。
「場合による?」
「本当に会いたい時もある」
「うん」
「でも大半は」
蓮司は続けた。
「昔の友達を思い出してるようで、昔の安心感思い出してる」
相談者はしばらく黙った。
間。
「何か分かるかも」
「だろうな」
少し静かになる。
「でもさ」
「何」
「今の友達より、昔の友達の方がキラキラして見える時ある」
蓮司は少し笑った。
「それな」
相談者も少し笑う。
「あるだろ」
「ある」
間。
「でもそれ、多分フェアじゃない」
相談者は首を傾げる。
「何で」
「昔の友達は、嫌な部分更新されないから」
相談者は止まった。
「……あ」
「記憶の中で固定されてる」
少し沈黙。
「今の友達は?」
「現在進行形」
「嫌なとこも見る」
「見る」
「面倒なとこも見る」
「見る」
「だから比較すると昔が勝つ」
相談者は苦笑した。
「ずるいな」
「かなりな」
間。
相談者は立ち上がった。
ドアの前で振り返る。
「思い出すのって、悪いことじゃないか」
「全然」
「戻りたいわけじゃなくても?」
「なくても」
相談者は小さく頷いた。
ドアが閉まる。
昔の友達を思い出すのは、今に不満があるからとは限らない。
ただその人が、自分の人生の一部だったというだけのこともある。