テラーノベル
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「高西選手、改めて今日はお忙しい中、ありがとうございました。おかげ様でイベントも無事に終了しました」
イベント終了後、志絵は賢に駆け寄り、お礼を述べる。
「こちらこそ、ありがとうございました。色々な音楽に触れて、改めて『今季も頑張ろう』と励まされました。それでは、失礼します」
「おっ……お疲れさまでした」
彼は急いでいるのか、挨拶もそこそこに急ぎ足で小ホールを後にすると、志絵は、広い背中を一礼して見送る。
(高西と少し話せる時間があるかなって思ってたけど…………早々と行っちゃったな……)
賢を見送った後、若干ガッカリした志絵は、まつ毛を伏せつつ、フウッとため息を漏らす。
踵を返してホールに戻ろうとすると、その様子をじっと伺っている男がいた。
「坂口…………ヨグルトの高西選手と……知り合いだったんだな」
低い声色で、志絵に声を掛けて近付いてきたのは、同期の風間隼人。
「あっ……ああ、風間くんお疲れさま。高西選手は、私の高校時代の同級生なんだ」
「へぇ。坂口に、そんな有名人の知り合いがいたなんて、初耳だよ」
どことなく棘のある言葉と、口唇を歪めながら皮肉めいた笑みを深める風間に、志絵は表情を曖昧にさせる。
彼女は職場の同期と、それなりにコミュニケーションを取っているけど、プライベートな話は、自分から滅多にしない。
高校時代や大学時代の親友と一緒にいる方が気兼ねなく話せるし、心も許せた。
職場の人間関係は仕事が絡むし、腹の探り合いではないけれど噂話や陰口を叩き、何を考えているのか分からない人が多いせいか、志絵は警戒している。
──そう、あの時と同じように、表向きは良い顔をするけど、私がいなくなった途端に……陰口を叩くんだ。
志絵の胸中が重く沈み込みそうになるけど、気持ちを切り替えて笑顔を作る。
「さて、イベントも終わったし、片付けしなきゃね!」
この場から逃げたい気持ちに駆られた志絵は、じっと眼差しを射抜いている風間の横を、そそくさと通り過ぎると、早足で舞台袖に向かった。
片付けを終えた志絵は、五階の広報部に戻ると、デスクに腰を下ろしてパソコンと対峙した。
報告書の作成は苦手だし語彙力がないから、いつも文章を打つのに時間が掛かってしまう。
今日のイベントに関する報告書を何とか作成すると、プリントアウトして部長のデスクの上に乗せた。
「さて、この後はレッスンだし、さっさと帰ろっと」
志絵は、すぐさま海野楽器のビルを出て、地下鉄丸の内線銀座駅のホームへ向かう。
電車が来るまで、彼女はバッグからスマートフォンを取り出すと、通知センターにメッセージ受信のダイアログが表示されていた。
──メッセージ受信:高西賢
彼女は慌ててダイアログをタップすると、彼からのメッセージを急いで開いた。
コメント
1件
読み終えました〜。イベント後の高西さんとの距離感、ちょっともどかしいですね…。急いで帰っちゃうし、話したかった気持ち、すごく伝わってきました。風間くんの棘のある言葉も気になるし、志絵ちゃんの職場での警戒心がひしひしと…。最後の高西さんからのメッセージでどうなるのか、続きがすごく気になります!管野さん、今日も素敵な作品をありがとうございます🖤
管野アリオ
733
#大人ロマンス
桃下結衣
208
#ロマンスファンタジー
Jasmine
1,008