テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は少し困った顔で言った。
「急に距離詰められると、無理になる……」
蓮司は椅子を引く。
「どんな詰め方」
「いきなりタメ口とか、距離近いノリとか。仲良くしようとしてるのは分かる」
「で、どうなる」
「最初は合わせる。でも内心ちょっと引いてる」
蓮司は座る。
「その引いた感じ、相手に出てるな」
相談者は黙る。
「……多分」
少し沈黙。
「それ、“嫌い”じゃなくて“速度が合ってない”」
「速度?」
「相手は一気に距離縮めるタイプ。お前は段階踏むタイプ」
相談者は小さく頷く。
「そうかも」
間。
「で、相手の速度に合わせて無理してる」
「最初だけ」
「そのズレが、あとで引きになる」
少し沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「速度を合わせるんじゃなくて、“制限する”」
「制限?」
「全部は乗らない」
相談者は眉を寄せる。
「どうやって」
「距離詰められても、一段だけで止める」
「一段?」
「タメ口来たら、完全には崩さないとか。軽く返すけど、全部は開かない」
間。
「それでいいの?」
「いい。“全部OK”にするから後で苦しくなる」
相談者は黙る。
「今までは?」
「最初に全部合わせてた」
相談者は小さく息を吐く。
「だから途中で無理になるのか……」
少し沈黙。
「あともう一個」
「何」
「引いたあと、戻さないだろ」
相談者は一瞬止まる。
「……戻してない」
「一回引いたら、そのまま距離固定してる」
間。
「それだと相手は“急に冷たくなった”になる」
相談者は苦笑する。
「確かに……」
「だから、引いたあとに“少しだけ戻す”」
「戻す?」
「軽い一言でいい。完全に切らない」
少し沈黙。
「なんかさ」
「何」
「距離って、一回決めたら固定だと思ってた」
「動くもんだ」
相談者は小さく頷く。
#読み切り
ドアの前で立ち止まる。
「全部乗らないで、一段で止める」
「それでいい」
ドアが閉まる。
距離は合わせるものじゃない。
調整し続けるものだ。
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