テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は席に座ると、少し考えてから口を開いた。
「自分で決めたことなのに、あとから『本当に自分で決めたのかな』って思うことがある」
蓮司は向かいに座る。
「何を決めた」
「進路とか。部活とか。友達との付き合い方とか」
「誰かに決めろって言われた?」
「はっきり言われたわけじゃない」
「じゃあ、何でそう思う」
相談者は少し黙った。
「親が喜びそうな方とか、先生が安心しそうな方とか、周りが『そっちの方がいい』って言いそうな方とか……そういうのを考えて決めてたから」
蓮司は少し考える。
「それでも最後に決めたのは?」
「自分」
「じゃあ自分で選んだんじゃないか」
「そうなんだけど……」
相談者は視線を落とす。
「自分の意思だったのか、周りの期待を先回りしてただけなのか、分からなくなる」
静かな時間が流れる。
蓮司は言った。
「選択って、全部が純粋な自分の気持ちだけでできてるわけじゃない」
「どういうこと?」
「家族のことも考える。お金も考える。周りの目も考える。失敗した時のことも考える」
「うん」
「その中で決めたなら、それも自分の選択だ」
相談者は少し考える。
「周りの影響が入ってても?」
「入ってていい」
「でも、それだと『自分で選んだ』って言えるのかな」
蓮司は少し笑った。
「じゃあ逆に聞く」
「何?」
「誰にも何の影響も受けずに決めたことって、今までどれくらいある?」
相談者は黙った。
「……ないかも」
「だろ」
「じゃあ、自分で選ぶって何なんだろ」
蓮司は少し間を置いた。
「いろんな声が聞こえたあとで、最後に自分がどれを選ぶかじゃないか」
相談者は顔を上げる。
「最後に?」
「そう。周りの意見を聞いたからって、選択権まで渡したことにはならない」
少し静かになる。
相談者はぽつりと言った。
「でも、あとから嫌になったら?」
「その時は変えればいい」
「そんな簡単に?」
「一度選んだら、一生その選択を守らなきゃいけないって誰が決めた」
相談者は苦笑した。
「自分かもしれない」
「また自分でルール作ってるな」
相談者は少し笑った。
「自分で選んだのに、誰かに選ばされた気がするのって、自分の気持ちより周りの声が大きかったからなのかな」
「それもあるだろうな」
「じゃあ、どうしたらいいんだろ」
蓮司は相談者を見る。
「『誰のために選んだ?』じゃなくて、『最後に何を選びたい?』って聞いてみればいい」
「今からでも?」
「今からでも」
相談者はしばらく黙っていた。
「……自分で選んだって言い切れないのが嫌だった」
「言い切らなくてもいい」
「え?」
「『いろいろ考えた上で、自分はこれを選んだ』で十分だ」
相談者は小さく頷く。
「全部自分だけで決めた、じゃなくてもいいんだな」
「むしろ、その方が現実的だ」
相談者は立ち上がる。
ドアの前で少し振り返った。
「誰かの言葉を聞いたことと、誰かに人生を決められたことは、同じじゃないのか」
「そこを混ぜなくていい」
相談者は少し笑って、部屋を出ていった。
ドアが閉まる。
自分で選ぶということは、誰の意見も聞かずに決めることではない。
迷ったり、影響されたり、誰かの言葉を参考にしたりしながら、最後に自分がどうするかを決めること。
だから、周りの声が混ざっていたとしても、その選択まで誰かのものになるわけではない。
コメント
1件
第31話、めっちゃ沁みた…😭💕 「自分で選んだのに誰かに選ばされた気がする」って感覚、すごくわかるし、蓮司の「いろんな声が聞こえたあとで最後に自分がどれを選ぶか」って言葉が優しすぎる!!!「自分で選んだって言い切らなくていい」って言われたら、なんだか肩の荷が降りた気持ちになるよ…。私も進路とか悩みすぎて周りの声ばっか気にしてたから、今度から「最後に何を選びたい?」って自分に聞いてみるね!ruruhaさん、このエピソードありがとう〜🌸✨
#怪異
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MaruM
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