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マリコ様今日もありがとうございます^_^ 朝から省吾さんのペースで奈緒ちゃんを可愛がってますね (((o(*゚▽゚*)o)))♡
グイグイ💓 もう我慢の限界だねぇ😍
(///∇///)省吾さん近すぎですよ笑っ
その後、省吾達の実証実験は無事に終わった。
欲しかったデータを入手出来たので、あとはそのデータを元に微調整を加える。
そしてその後実用化へ向けて進み始める。
月曜の朝、九時になると奈緒はCEO室へコーヒーを持って行った。
省吾に会うのは五日ぶりだ。
こんなに長い期間省吾に会わなかったのは、奈緒が入社してから初めてだ。
部屋に入ると、省吾はパソコンで作業をしていた。
「お帰りなさい。実証実験は無事終わったようで良かったですね」
奈緒はそう言ってデスクにコーヒーを置く。
「ありがとう。なんとか無事に終わったよー。これでやっと一息つけそうだ、うん、美味い」
省吾は早速コーヒーを飲んだ。
「今日はお疲れでしょうから、緩めのスケジュールにしておきました」
「今日外出がないのは助かるよ、もうクタクタなんだ」
省吾は嬉しそうに微笑むと、またコーヒーを一口飲んだ。
そんな省吾を見て、奈緒はなぜか胸が熱くなる。
そこで省吾が言った。
「三上君の事だけど、その後大丈夫?」
「はい。あれからは特に何もないです」
「それは良かった。ただ俺の予想では、三上はまたきっとちょっかいを出してくると思うから気を付けて」
「え? そんなまさか……」
「彼は昔社内で男女トラブルを起こした事があってね……だから注意した方がいい」
それを聞いた奈緒は驚いた。
「トラブルって……どんな?」
「まあ一言で言えばドロドロの二股恋愛的なやつ?」
「…………」
奈緒はびっくりしていた。
女子社員の憧れの的である三上にそんな過去があるとは知らなかったからだ。
(女子社員達から大人気の『白馬の王子様』がまさかそんな事を?)
たしかに秘書室での三上には違和感があったが、まさかそこまでとは……。
「まあそういう事だから、奈緒も気を付けて」
「わかりました。では失礼します」
奈緒が出口へ向かおうとすると、省吾が呼び止める。
「ちょっと待って」
奈緒が足を止めて振り返ると、省吾が手招きをしている。
省吾はソファーから紙袋を持って来ると、再び椅子に座る。
「秘書室用の北海道土産だ。さおりさん達と食べて。奈緒が好きだって言ってたお菓子にしたよ」
途端に奈緒の瞳が輝く。
「『白い恋文』? わっ、嬉しいっ」
奈緒は小走りでデスクへ駆け寄ると、省吾から紙袋を受け取り中を覗いた。
「アレ? なんかいっぱい入ってますよ? 大きい箱以外に小さいのが三つも?」
「小さい方は、日頃お世話になっている美人秘書チームさんへ一個ずつね」
「うわーっ、ありがとうございますっ」
奈緒は嬉しかった。これなら家でも楽しめる。
「他のフロアーには?」
「それは原田さんが今配ってくれてるよ」
「そうですか。じゃあこれは有難くいただきますね」
奈緒がペコリとお辞儀をして出口へ向かおうとした時、突然省吾が奈緒の腕を掴んでグイッと引き寄せた。
「あっ……」
バランスを崩した奈緒は、すとんと省吾の膝の上に収まる。
「えっ? あっ、あの……?」
省吾の顔がいきなり近くに見えたので、奈緒は顔を赤くしながらしどろもどろになる。
その間、省吾の手は奈緒の腰をしっかりとつかまえて逃げられないようにした。
「もう一つお土産があるんだよ」
省吾は空いている方の手で引き出しを開けると、中に入っている袋を取り出し奈緒に渡した。
「これを私に?」
「それは奈緒だけに買って来た」
「私……だけに?」
「そう。開けてごらん」
奈緒はびっくりした表情のままコクリと頷くと袋を開けてみる。
すると中には北海道のゆるキャラとして人気の、『降るリン♪』というマスコットが入っていた。
真っ白でフワフワとした『降るリン♪』は、雪の妖精だ。
このキャラクターは北海道以外でも大人気で、たまに関東のテレビでも紹介されるので奈緒も知っていた。
「可愛い! でもどうしてこれを私に?」
「奈緒にそっくりだろう? だから空港の売店で目が合った時につい買っちまった」
「えっ? に、似てます? 私に?」
「うん、まんまだろ?」
「そんな事はないかと……」
「そっくりだよ。色白で目が大きくてフワフワしてるところなんかそっくりだ」
奈緒はそれを聞いてクスクスと笑い出した。
「なんで笑うんだよ」
「だって色白で目が大きければ、誰でも似てるんじゃないかなって思って」
奈緒はツボにはまったようで、笑いが止まらない。
「いや、これはどう見ても奈緒だよ。目があった瞬間『奈緒だっ!』って思ったんだから」
必死に説明をする省吾を見て、奈緒はまだ笑いが止まらない。
こんなに笑ったのは久しぶりだ。
その時、突然省吾が奈緒の喉元に顔をうずめた。
「えっ? あ、あの、ちょ、ちょっと……?」
奈緒は焦って省吾の頭を押しのけようとするがビクともしない。
むしろ省吾は腕に力を入れて更に奈緒を強く抱き締める。
「あっ、あの……」
「ごめん、あと一分だけ……」
「…………」
省吾の懇願するような声に、奈緒は金縛りにでもあったかのように動けなくなる。
それと同時に心臓がドキドキと大きく高鳴り、その音が省吾に聞こえてしまうのではないかと心配になる。
1~2分ほど経ってから、漸く省吾が奈緒から離れた。
「ホッとするな……それに奈緒はいい匂いがする……お陰で元気が出たよ」
省吾のとろけそうなくらいの優しい口調に、思わず奈緒は身体中の力が抜けてしまった。
省吾はそんな奈緒の腰を両手で掴むと、膝の上から下ろして立たせる。
「え、えっと……」
上手く言葉が出ない奈緒に向かって、省吾はニッコリと微笑む。
「じゃあ奈緒、今日もよろしく!」
「あ、はい……じゃあ失礼いたします……」
奈緒は真っ赤な顔のまま省吾に向かってぺこりとお辞儀をすると、逃げるように出口へ向かう。
そんな奈緒の後ろ姿を省吾は微笑みながら見つめていた。
(フッ、真っ赤になって可愛いな……)
それから省吾は両手で前髪をかき上げると、パソコンへ向かった。