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放課後。
空き教室。
日下部は机に突っ伏していた。
「……寝てます?」
ドアを開けた相談者が聞く。
「起きてる」
顔は上げない。
「その状態で?」
「省エネ」
相談者が少し笑う。
日下部はようやく顔を上げた。
「で?」
相談者は座る。
少し迷ってから口を開いた。
「仲良い友達なんです」
「うん」
「普通に遊ぶし、LINEもするし、嫌われてる感じもないんです」
少し間。
「でも」
視線が落ちる。
「たまに、すごく距離感じるんです」
日下部は黙る。
「みんなで笑ってる時とか、別に何かされたわけじゃないのに」
「急に?」
「はい」
相談者は頷く。
「なんか、自分だけ外側にいる気がして。話しかけづらくなったり、一人で変に落ち込んだり」
短く息を吐く。
「前までこんなんじゃなかったのに」
教室に少し静かな時間が流れる。
「距離ができたと思う?」
相談者は考える。
「思います」
「証拠は?」
相談者は止まる。
「え」
「距離ができたって思う理由」
少し沈黙。
「……分かんないです」
「何か言われた?」
「言われてないです」
「避けられてる?」
「それもないです」
「誘われなくなった?」
「いや」
相談者は首を振る。
「普通に誘われます」
日下部は小さく頷く。
「じゃあ」
少し間。
「距離じゃなくて、不安かもな」
相談者は顔を上げる。
「不安?」
「人間関係って悪くなってなくても」
短く言う。
「急に確認したくなる時ある」
相談者は黙る。
「このままでいいのかな、嫌われてないかな、置いていかれてないかな。そういう時期」
相談者は視線を落とす。
「あります」
「最近何かあった?」
少し考える。
「クラス替えしてから、ですかね」
「なるほど」
日下部は頷く。
「環境変わると人間関係も揺れる。前みたいに戻らないかも、変わるかも」
短く言う。
「だから不安になる」
相談者は黙る。
「私、距離を感じてるんじゃなくて」
少し間。
「距離ができる未来を怖がってたのかも」
「そっちっぽいな」
教室の外から下校する生徒たちの声が聞こえる。
「あと」
日下部は言う。
「仲良い関係って毎日同じ温度じゃない」
相談者は顔を上げる。
「え」
「近い日もあるしちょっと遠い日もある。波ある」
短く言う。
「ずっと百点の距離感なんてない」
相談者は少し笑った。
「なんか、勝手に減点してました」
「採点厳しいな」
「自分に?」
「関係に」
相談者は吹き出した。
「確かに」
立ち上がる。
「仲良くなくなったんだと思ってました」
「変化と終了は別」
日下部は言う。
「そこ、一緒にすると疲れる」
ドアが閉まる。
仲良いはずなのに距離を感じる日がある。
それは関係が壊れたからではなく、人間関係がずっと同じ形ではないからなのかもしれない。
コメント
1件
**はる。です!** 第10話読んだわ。今回も日下部の言葉が刺さった。「ずっと百点の距離感なんてない」って台詞、めっちゃ沁みた…。クラス替え後の人間関係って確かに不安になるよな。でも「変化と終了は別」っての、ホントその通りだと思う。相談者と日下部のやり取り、自然で良かった🔥