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#一次創作
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放課後。
空き教室。
日下部は机に参考書を開いたまま、シャーペンを指で転がしていた。
ドアが開く。
「お疲れ」
「お疲れ」
相談者が入ってくる。
「今日は進んでます?」
「二ページ」
「すごいじゃないですか」
「奇跡」
相談者が笑いながら座る。
「今日は?」
相談者は少し考えてから話し始めた。
「俺、自分だけ思い出を引きずってる気がするんです。友達と『あの時楽しかったよね』って話しても、相手は『そうだっけ』くらいで終わることがあって」
日下部は黙って聞く。
「俺は今でも覚えてるのに、相手は忘れてたりして。逆に相手が覚えてることは、俺は全然覚えてなかったり」
少し間を置く。
「なんか、自分だけあの時間を大事にしてたみたいで、ちょっと寂しくなるんです」
教室が静かになる。
日下部が聞く。
「その時、『相手は大事にしてなかった』って思う?」
相談者は少し考える。
「……思ってました」
日下部は頷く。
「でもさ」
少し間を置く。
「覚えてることと、大事だったことは同じじゃない」
相談者は顔を上げる。
「違うんですか」
「違う」
日下部は言う。
「人によって残る思い出が違うだけ」
相談者は黙る。
「例えば修学旅行でも。
景色を覚えてるやつもいれば、夜に話したことを覚えてるやつもいる。先生に怒られたことだけ覚えてるやつもいる」
相談者は少し笑う。
「いますね」
「いる」
日下部も少し笑う。
「だから、相手が忘れてるんじゃなくて」
少し間。
「違う場面を持ち帰ってるだけかもしれない」
相談者は考え込む。
「俺、自分が覚えてることを相手も同じ熱量で覚えてると思ってました」
「期待するよな」
短く返す。
「でも」
日下部は続ける。
「同じ一日を過ごしても、全員違う思い出になる」
窓の外から下校する生徒たちの笑い声が聞こえる。
相談者は小さく頷いた。
「それなら」
少し笑う。
「忘れられたって決めつけなくていいのか」
「ああ」
日下部は言う。
「お前が大事にしてる思い出は、本物だ」
少し間を置く。
「ただ、相手にも相手の本物がある」
相談者は立ち上がる。
「なんか少し安心しました」
「思い出って」
日下部は笑う。
「共有してるようで、半分は個人のものだからな」
相談者も笑った。
「確かに」
ドアが閉まる。
同じ時間を過ごしても、心に残る景色は人それぞれ違う。
だから思い出の重さが違っても、あの時間まで嘘になるわけじゃない。
コメント
1件
おつかれさま〜!!第16話読んだけど、めっちゃ沁みた…😭💕 「覚えてることと大事だったことは同じじゃない」ってセリフ、頭の中でずっと響いてるよ。確かに、同じ時間を過ごしても人によって残る記憶って違うもんね。私も「自分だけ覚えてる…?」って思ったことあるから、すごく胸に来た…。 日下部くんの優しい断言が刺さる。「思い出は半分個人のもの」って考え方、めっちゃ救われるな〜。今回も静かに心をぎゅってされた回でした、ありがとう🌸