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ruruha
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#短編
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ドアが開く。
相談者は少し気まずそうに言った。
「席替えしたあと、最初の一言が出ない……」
蓮司は椅子を引く。
「隣とか前後?」
「全部。周り変わると、一回リセットされる」
「で、どうなる」
「何も話さないまま時間だけ過ぎる。
気づいたら“話さない関係”で固定される」
蓮司は座る。
「最初の数分で決まってるな」
相談者は小さく頷く。
「逃してる……」
少し沈黙。
「何が止めてる」
「内容。何話せばいいか分からない」
蓮司は首を振る。
「内容じゃない」
「え」
「“きっかけ”を作ってないだけ」
相談者は黙る。
「最初の一言は、意味いらない」
「いらない?」
「会話を始める合図でいい」
間。
「例えば」
「“この席寒くない?”とか、“黒板見やすい?”とか」
相談者は少し考える。
「どうでもいい話……」
「どうでもいいからいい。
深さは後でいい」
少し沈黙。
「でもタイミング逃すともう無理」
「だから“座ってから30秒以内”」
「そんな早く?」
「早いほど自然。
遅いほど理由が必要になる」
相談者は眉を寄せる。
「確かに、時間経つと話しかけづらい」
「最初は“理由なしで話せる唯一の時間”」
間。
「もしスルーされたら?」
「普通にある。
その場合はもう一回だけ、別の軽いやつ出す」
「二回まで?」
「それ以上は粘らない」
相談者は黙る。
「今までは?」
「一回も出してない」
相談者は苦笑する。
「ゼロだった……」
少し沈黙。
「あともう一個」
「何」
「“誰かが話しかけてくる待ち”やめろ」
「……やってる」
「全員同じこと思ってると、何も始まらない」
間。
「なんかさ」
「何」
「最初の一言ってめっちゃ重要だったんだな」
「そこで方向決まる」
相談者は小さく頷く。
ドアの前で立ち止まる。
「内容じゃなくて、合図出す」
「それでいい」
ドアが閉まる。
最初の一言は、
会話の質じゃなくて、開始のスイッチだ。