テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は席に座る前から苦笑していた。
「返事してないやつ、今七件ある」
蓮司は椅子を引く。
「多いな」
「しかも全部既読」
「なるほど」
蓮司は座った。
「嫌いな相手?」
「違う」
「苦手?」
「別に」
「返したくない?」
相談者は少し考える。
「返したい」
「じゃあ返せ」
「できたら来てない」
蓮司は少し笑った。
「それもそうか」
間。
「何で止まる」
相談者は机を見る。
「分かんない」
「分かる範囲で」
少し沈黙。
「何て返そうって考える」
「うん」
「送る」
「うん」
「いや違うなって消す」
「うん」
「そのまま放置」
蓮司は頷く。
「推敲しすぎだな」
相談者は苦笑した。
「作文みたいになる」
「LINEなのにな」
間。
「でも適当に返したら失礼じゃん」
「誰に」
「友達」
「友達なら多少雑でも死なない」
相談者は笑った。
「死なないか」
「死なない」
少し静かになる。
「でもさ」
「何」
「返事したら会話続くじゃん」
蓮司は少し顔を上げる。
「そっちか」
相談者は黙る。
「返事一個じゃ終わらない」
「終わらない」
「また返す」
「返す」
「また来る」
「来る」
「それ考えると重い」
少し沈黙。
「返事じゃなくて、会話全部背負ってるな」
相談者は小さく息を吐いた。
「そうかも」
間。
「お前さ」
「何」
「一通返すたびに契約書交わしてる?」
相談者は吹き出した。
「そんな重くない」
「中身は似たようなもんだ」
少し笑う。
「確かに」
蓮司は机に肘をつく。
「返事ってな」
「うん」
「会話継続の誓いじゃない」
「うん」
「一球投げ返してるだけ」
相談者は黙る。
「一球」
「相手が終わらせることもある」
「ある」
「お前が終わらせることもある」
「ある」
「なのに、試合全部背負ってる」
少し静かになる。
「何か疲れる理由分かった」
「一通が重すぎる」
間。
「あと」
ruruha
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ruruha
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#ドラマ
柘榴とAI

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榎本くもり
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蓮司は続ける。
「返事遅れたら余計送りづらくならないか」
相談者は即答した。
「なる」
「一日」
「うん」
「二日」
「うん」
「一週間」
「うん」
「今さら感」
「めっちゃある」
少し沈黙。
「で、さらに遅れる」
「そう」
「負債みたいになる」
相談者は笑った。
「言い方」
「近いだろ」
間。
「でも何か謝るのも変だし」
「変じゃない」
「そう?」
「“遅くなった、ごめん”で終わる」
相談者は少し考える。
「そんなもんか」
「そんなもんだ」
少し静かになる。
「なんかさ」
「何」
「返事できない自分って冷たい人間なのかなって」
蓮司は首を横に振る。
「冷たいやつは七件抱えて悩まない」
相談者は止まる。
「……確かに」
「面倒なのと、どうでもいいは別だ」
間。
「優先順位下がってるだけの時もある」
「悪くない?」
「人間だしな」
少し沈黙。
相談者は立ち上がった。
ドアの前で振り返る。
「一通返すだけなのに、勝手に大事にしてたかも」
「よくある」
「とりあえず一球だけ投げる」
「それで十分」
ドアが閉まる。
返事ができないのは、相手を嫌いだからとは限らない。
一通の後ろに、会話全部を背負いすぎていることもある。
コメント
1件
うわあ、めっちゃ分かる…!既読つくのに返事できないの、あるあるすぎて心臓ギュッてなった😭💔 蓮司の「一球投げ返してるだけ」「冷たいやつは七件抱えて悩まない」が沁みた〜。会話全部背負わなくていいんだって気づかせてくれる優しい会話劇、大好きです🌸 作者さんの空気感の描写、天才すぎる…!