テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ruruha
362
ruruha
272
ruruha
558
ドアが開く。
「……失礼します」
「どうぞ」
生徒が入ってくる。
空き教室の窓際。日下部は授業で配られたプリントをまとめていた。
机の上にそれを置いて、生徒へ向き直る。
「何かあった?」
生徒は椅子に座る。
少し考えてから話し始めた。
「まだ高校生なのに変な話なんですけど」
「別に」
日下部は言う。
「変な相談は今さらだろ」
生徒は少しだけ笑う。
それから視線を落とした。
「大人になったら」
少し間。
「友達できる気がしないんです」
日下部は黙って聞く。
「今ですら苦手なのに。クラス替えもあるし部活もあるし、学校だから話す機会あるじゃないですか」
「うん」
「でも卒業したら大学とか就職とかみんなバラバラになるし」
短く息を吐く。
「そこで新しく友達作れる気がしないんです」
日下部は少し考える。
「友達ってどうやってできると思ってる?」
生徒は止まる。
「え。気が合って自然に仲良くなる感じ?」
日下部は頷く。
「それ、中高だとそう見える」
生徒は首を傾げる。
「違うんですか」
「学校は強制的に毎日会う」
短く言う。
「だから自然に見える」
生徒は黙る。
「同じ教室、同じ授業、同じ行事、同じ先生の愚痴」
日下部は続ける。
「接触回数が勝手に増える」
「あ」
「だから仲良くなりやすい」
生徒は少し考える。
「じゃあ大人は?」
「自分で回数作る」
即答だった。
生徒は黙る。
「何かの集まり行ったり、バイトだったり サークルだったり、職場だったり」
「でも難しそうです」
「難しい」
日下部は普通に言う。
生徒は少し驚く。
「否定しないんですね」
「しない」
短く返る。
「高校より簡単ではない。待ってても増えないこともある」
生徒は黙る。
「ただ」
日下部は続ける。
「だからゼロとも限らない」
「……うん」
「お前さ」
日下部は言う。
「まだ卒業もしてないのに」
少し間。
「二十五歳みたいな心配してる」
生徒は吹き出した。
「確かに」
「未来の不安って」
日下部は続ける。
「だいたい情報不足」
生徒は黙る。
「まだ始まってない生活を勝手に絶望バージョンで想像してる」
生徒は苦笑した。
「それはあるかもです」
立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「なんか、十年後の孤独を心配してました」
「まず来週の小テスト心配しろ」
即答だった。
生徒は笑う。
「それもあります」
ドアが閉まる。
まだ来ていない未来は、想像の中でいくらでも不安になる。
でも、その未来の自分がどんな人間関係を持っているかは、今の時点では誰にも分からない。
コメント
1件
うわあ、この話めっちゃ沁みた…😢💕 「まだ卒業もしてないのに二十五歳みたいな心配してる」って日下部先生のツッコミ、笑ったけどめっちゃ刺さる〜!確かに未来のことって情報不足で勝手に絶望バージョン想像しちゃうよね…でも「まず来週の小テスト心配しろ」で現実に戻される感じ、すごく良かったです✨ 大人になっても友達できる気がしないって悩み、めっちゃわかる…でも「接触回数を自分で作る」って言葉にちょっと希望もらえた気がする!次話も楽しみにしてます🌸