テラーノベル
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ドアが開く。
相談者は机を見るような目で言った。
「プリント回すときだけ、“あ、いたんだ”みたいになる……」
蓮司は椅子を引く。
「普段は?」
「普通にいる。でも会話には入ってない時間多い」
「で、プリントのときだけ関わる」
「そう。“はい”って渡して終わり」
蓮司は座る。
「接点が機能だけだな」
「機能?」
「配る、回す、渡す。
役割としての接点しかない」
相談者は黙る。
「だからその瞬間だけ認識される」
「……それだ」
少し沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「その“機能の瞬間”を使う」
「使う?」
「渡すときに一言足す」
相談者は眉を寄せる。
「一言?」
「内容はいらない。
“これ裏もあるよ”とか、“多いな今回”とか」
「それだけ?」
「それだけで“役割”から“人”に変わる」
間。
「でも会話広がらなかったら?」
「広げなくていい。
接点を“機能だけにしない”のが目的」
相談者は少し考える。
「今までは完全に作業だった……」
「作業だと記憶に残らない」
少し沈黙。
「逆に、相手が返してきたら?」
「そのときだけ一段だけ続ける。
長くしない」
「短くでいい?」
「いい。
次に繋がる形だけ残す」
間。
「なんかさ」
「何」
「存在って、普段の量だけじゃないんだな」
「接点の質だな」
相談者は小さく頷く。
少し沈黙。
「別に目立ちたいわけじゃないけど」
「何」
「“機能だけ”なのはきつい」
「分かる」
ドアの前で立ち止まる。
「一言だけ足す」
「それでいい」
ドアが閉まる。
関わりが作業だけだと、
人はそこに“人”を見なくなる。
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