テラーノベル
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ドアが開く。
「……失礼します」
「どうぞ」
生徒は入ってきて座る。
スマホを握ったまま話し始める。
「なんか、写真撮るの苦手で」
日下部は目を向ける。
「集合写真とか」
「うん」
「撮られたあと、まず自分の顔探すんです」
視線が落ちる。
「で、“終わった……”ってなること多くて」
少し間。
「なんでこんな顔してんだろ、とか。自分だけ変じゃないか、とか」
短く息を吐く。
「他の人は普通に見れるのに、自分だけ無理なんです」
「“他人が見る自分”を直視する感じになるからな」
日下部は言う。
生徒は小さく頷く。
「……はい」
「鏡と違って、自分で調整できない」
短く言う。
「だから違和感が強い」
生徒は黙る。
「でも他の人、普通に盛れてません?」
少し強く言う。
日下部は少し間を置く。
「そう見えるだけ」
短く言う。
「人って、自分の顔だけ細かく見る」
生徒は止まる。
「他人の写真って」
日下部は続ける。
「“全体”で見てる」
「でも自分だけ、“口元変”とか“目死んでる”とか細部見る」
生徒は苦笑する。
「……めちゃくちゃやってます」
「あと」
「はい」
「“普段見慣れてる顔”との差もある」
短く言う。
「スマホの内カメとか鏡って、見慣れて補正かかってる」
生徒は少し考える。
「じゃあ、みんな自分の写真そんな好きじゃないんですか」
「普通に嫌がるやつ多い」
即答。
生徒は少し笑う。
「自分だけかと思ってました」
「あと、一枚で判断しすぎ」
日下部は言う。
「変な瞬間切り取られてるだけのこともある」
生徒は黙る。
「……毎回、“これが本当の自分なんだ”って落ち込んでました」
「静止画一枚で決まらない」
短く返る。
生徒は立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「写真だけで一日テンション下がることありました」
「自分の顔だけ見すぎなんだろうな」
短く返る。
ドアが閉まる。
写真は、“他人から見える自分”を急に突きつけてくる。
だから、必要以上に気になってしまう。
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