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廊下の片隅から、遥は無理やり掃除用具入れに引きずり込まれた。複数の笑い声が狭い空間に充満する。押し倒された拍子に背中の古傷が軋むが、呻き声を上げた瞬間、すぐさま靴底が顔を押さえつけた。
「ほら、こいつ掃除係だろ? ちょうどモップあるじゃん」
「ピッタリじゃん。お前の相棒だな」
誰かが笑いながらモップを引きずり出す。柄の先が床を叩き、埃が舞う。汚水の染みついた先端が、容赦なく遥の頬へと押しつけられた。
「んっ……やめろ……!」
口を塞がれ、反射的に目を閉じる。だが次の瞬間、別の手が頭を掴み、強引に口をこじ開ける。モップの先が唇を裂くように押し込まれ、古びた洗剤の臭いが喉を焼いた。
「歯磨きタイムだって! ほら、口開けろよ!」
「掃除用具室のブラシ以下だな、マジで!」
咳き込みながら必死に頭を振るが、背後から押さえつけられ、声はくぐもって響くだけだ。喉の奥まで突っ込まれた繊維が吐き気を誘い、胃が逆流する。涙が勝手に滲み、顎が震えた。
「……やめて……もう……吐く……」
弱々しい声が漏れると、さらに嘲笑が高まる。
「は? お前が汚いんだよ! 掃除してやってんの!」
「まだまだだろ? 髪だってベタベタしてんじゃん」
そう言いながらモップの柄で後頭部を叩かれる。鈍い衝撃が響き、視界が揺らぐ。床に転がされると、髪を無理やり掴まれ、モップの先と絡め取られた。
「見ろよ、床磨きマシーンの完成!」
「おい、歩け。いや、這えよ!」
髪に絡んだモップを引きずられるまま、四つん這いで床を擦らされる。無理に止まろうとすれば、柄で背中を殴られ、靴で押し潰される。
「もっと腰動かせよ! そうそう! いいじゃん、犬の掃除機!」
「この後バケツの水も使おうぜ。頭突っ込ませて泡ブクブクってやつ」
遥は唇を噛みしめながら震えた声を吐き出す。
「……どうして……こんなこと……俺、何したんだよ……」
返ってきたのは容赦ない嘲りだった。
「生まれてきたのが罪じゃね?」
「存在自体がゴミなんだから、掃除道具で十分」
冷たい水が入ったバケツが運ばれる。頭を押さえつけられ、そのまま突っ込まれる。濁った水が鼻と喉に流れ込み、必死に暴れるが、後頭部をモップで押さえられて逃げ場はない。
「泡立ってきた! ほら、もっともがけ!」
「水の中で謝ってみろよ!」
肺が焼けるように苦しい。必死に顔を上げ、咳き込みながら叫んだ。
「……ごめん……ほんとに……もうやめて……!」
だが謝罪はむしろ餌となり、さらに押さえつける力が強まる。
「謝るくらいなら最初から生きてんじゃねえよ」
「まだまだ遊べるな。次はどっちが突っ込む?」
狭い掃除用具室には、笑い声と遥の苦しげな吐息だけが響き続けていた。