テラーノベル
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椅子に座るなり、少年は机に突っ伏すようにして深い息を吐いた。
「……なんか、俺って結局ひとりなんだなって思うんです」
蓮司はその姿を眺めながら、ペンを指で回した。
「いきなり結論出したな。で、その“ひとり”って、具体的に?」
「……友達と話してても、どっかで置いてけぼり感あるし。家でも空気だし。
誰かと一緒にいても、心の中はずっと孤独っていうか……」
「なるほど。……で、お前は“誰かが完全にわかってくれる”って思ってたのか?」
少年はハッとして顔を上げる。
「……だめ、なんですか」
蓮司は肩をすくめ、やわらかく笑った。
「だめじゃない。ただ、人ってね、どこまでいっても他人だからさ。完全にわかり合うなんて無理ゲーなんだよ」
少年の目が沈む。
蓮司は机にペンを置き、声を落とした。
「でも――“完全にわからなくても、一緒にいたい”って思える人はいる。
そういう相手が一人でも見つかれば、孤独は“消えないけど、和らぐ”んだよ」
しばらく沈黙のあと、少年は小さく呟いた。
「……そういう人、いるのかな」
「いるさ。多分もう会ってる。気づいてないだけだ」
蓮司はにやりと笑った。
「ほら、今日だって俺と話せてるだろ。少なくとも今のお前は、完全にひとりじゃない」
少年は吹き出した。
「……蓮司に言われると、ちょっとずるい気もする」
「ずるいのはお互い様。孤独ってやつも、案外わるくないぞ。お前のことを静かに守ってくれるからな」
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