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#読み切り
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相談者は座ってすぐスマホを机に置いた。
「既読ついてるのに返ってこないやつ、あれ何なんですか」
蓮司は一瞥する。
「誰に送った」
「友達」
「内容は」
「普通のやつ。“明日どうする?”みたいな」
「緊急じゃない」
「うん」
少し間。
「既読は?」
「すぐついた」
「で、返事は?」
「来ない」
相談者は指で机を軽く叩く。
「数時間後とかならまだ分かる」
「でも?」
「一日来ない」
沈黙。
「で、次の日には普通に話してくる」
「対面では」
「何もなかったみたいに」
蓮司は短く息を吐く。
「あるな」
「あるだろ」
相談者は少し笑うが、引っかかりは消えない。
「俺さ」
「うん」
「嫌われてんのかと思う」
「そこまで飛ぶか」
「だって既読ついてるんだぞ」
少し強く言う。
「見てるのに返さないって、優先度低いってことじゃん」
沈黙。
「間違ってはない」
蓮司が言う。
「でもそれだけじゃない」
「どういうこと」
「返信ってな」
「うん」
「内容じゃなくてタイミングで決まること多い」
相談者は眉を寄せる。
「タイミング?」
「見た瞬間、返す余裕あるかどうか」
「余裕?」
「頭の中の空き」
少し間。
「“あとで返そう”って思って忘れる」
相談者は少し黙る。
「……それだけ?」
「それだけのことも多い」
沈黙。
「でもさ」
「何」
「他のやつには返してるかもしれないじゃん」
「あるな」
「それ、普通にキツい」
蓮司は頷く。
「優先順位は確実にある」
「やっぱりか」
相談者は苦笑する。
「じゃあ俺、低い?」
「場面による」
「曖昧だな」
「人は相手ごとに優先度固定してない」
相談者は顔を上げる。
「変わるのか」
「内容、気分、状況で変わる」
少し間。
「お前の“明日どうする”は」
「うん」
「急ぎじゃない」
「確かに」
「だから後回し」
「で、忘れる」
相談者はため息をつく。
「一番雑な扱いだな」
「逆に言えば」
蓮司は言う。
「重く見られてない」
「どういう意味」
「返さなくても関係壊れないと思われてる」
相談者は少し止まる。
「……それ、いいのか悪いのか分からん」
「両方」
沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「急ぎなら書け」
「何て」
「“今日中に決めたい”とか」
「期限つける」
「そう」
少し間。
「あと」
蓮司は続ける。
「返ってこない前提で動く」
「え」
「相手の返信に依存しない」
相談者は苦笑する。
「ドライだな」
「現実的だ」
静かな空気。
相談者はスマホをポケットに入れる。
「既読って便利だけど」
「うん」
「余計なことも見えるな」
ドアの前で振り返る。
「見えなくていい温度差まで」
蓮司は何も言わない。
既読は、相手の“見た”を可視化する。
でも、“返すかどうか”は別の問題で、そこにある優先度までは、はっきりとは見えない。