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#読み切り
相談者は座ってから、少し言いにくそうに口を開いた。
「仲良くなると、逆に離れたくなるんですよね」
蓮司は視線を向ける。
「嫌いになるのか」
「違う。むしろ逆」
相談者は苦笑する。
「話してて楽しいし、向こうも距離詰めてくる。でも、そこで急に冷める」
「どのタイミングだ」
「向こうが“こっち側”に入ってきた感じした時」
「具体的に」
「毎日話すようになるとか、LINEの頻度上がるとか、放課後一緒に帰ろうって言われるとか」
少し間。
「急に“近い”って思う」
沈黙。
「で、どうする」
「避ける」
「分かりやすいな」
「自分でも分かってる」
相談者は机に視線を落とす。
「返信遅らせたり、予定あるって言ったり、ちょっとずつ距離戻す」
「相手は?」
「気づくやつは気づく」
「で、離れる」
「そう」
短い沈黙。
「それで困ってる?」
「困ってる」
少し強く言う。
「毎回それで関係終わる」
蓮司は考える。
「近くなると何が嫌だ」
相談者は少し黙る。
「……期待される感じ」
「何を」
「“仲いいよね”って前提」
言葉を探す。
「それに応え続けないといけない感じ」
「義務になる」
「そう」
蓮司は頷く。
「距離が近いほど役割が増える、それが重い」
「重い」
相談者は小さく息を吐く。
「あと」
「何」
「離れたくなった時に、離れにくくなる」
沈黙。
「最初の距離なら、自然に戻れる」
「でも近くなると」
「“なんで?”ってなる」
「説明が必要になる」
「それが面倒」
蓮司は少しだけ笑う。
「筋は通ってる」
「だろ」
相談者も少し笑うが、すぐに戻る。
「でもさ」
「何」
「それやってると、深い関係できない」
静かな声だった。
蓮司は頷く。
「できないな」
「やっぱりか」
沈黙。
「じゃあどうすればいい」
少し間を置いて、蓮司が言う。
「一気に近づけるから反動が来る」
相談者は顔を上げる。
「どういうこと」
「距離の上げ方が急なんだよ」
「……ああ」
「毎日話す、毎日帰る、全部やる。で、限界来る。だから最初から制限する」
相談者は考える。
「例えば?」
「頻度決める」
「回数?」
「週に何回とか」
少し笑う。
「ルール化か」
「雑でもいい」
沈黙。
「あと」
蓮司は続ける。
「“近づいても離れていい”って前提を持つ」
「そんな都合いい?」
「実際そうだろ」
相談者は黙る。
「人間関係って」
「うん」
「固定じゃない。距離は動く」
少し長い沈黙。
相談者は立ち上がる。
「俺、距離の調整下手なんだな」
ドアの前で振り返る。
「0か100しかない」
蓮司は短く言う。
「50を作れ」
近づくことと、離れることは、どちらか一方じゃない。
途中の距離を持てるかどうかで、続く関係は変わる。