テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
白羽瑠璃 @らいぱれ 💕🧁✨️
687
488
コメント
1件
うわ…読んでて胸が痛くなったわ……。この学校、教師も含めて全員が“遥”をいじめの対象として黙認してるのが本当に怖い。とくに「見学でいい」「問題起こすなよ」って教師のセリフが無意識の加害者すぎて、リアルな無関心の暴力を感じた。説明する意味が消えるって感覚、すごく分かるし、読んでて息が詰まった……。早くこの空気をぶち破ってくれる展開が来てほしいわ。
朝のホームルーム。
教室はもう、
誰が何をするか決まっている。
席は壁際。
机は半歩だけ後ろ。
黒板係も日直も、
遥の名前は最初から入らない。
教師が出席簿を開く。
「……遥」
返事をする。
「はい」
一瞬だけ、
教師の目が教室をなぞる。
それから、
何も言わないまま次へ行く。
「次」
それで終わる。
配布物。
「前から回せ」
紙が流れる。
止まる。
飛ばされる。
教師は見ている。
見ているが、何も言わない。
一度だけ、言う。
「足りない人は自分で取りに来い」
教室が少し笑う。
遥は立ち上がる。
前まで歩く。
誰かが足を出す。
わざとではない顔。
躓く。
笑い。
教師は言う。
「騒ぐな」
それで終わる。
グループワーク。
「四人組作れ」
一瞬で輪ができる。
残る。
教師は黒板を見たまま言う。
「余った人は……」
少し間。
「見学でいい」
見学。
教室が静かに笑う。
「適材適所」
「邪魔にならない」
「平和」
小さな声が重なる。
教師は聞こえている。
聞こえているが、板書を続ける。
授業中。
消しゴムが飛ぶ。
背中に当たる。
教師は振り返る。
「静かにしろ」
それだけ。
誰に向けてかは言わない。
もう一度飛ぶ。
今度は首。
教師は言う。
「集中できないなら廊下に出ろ」
視線が集まる。
遥に。
「……俺?」
誰かが小さく言う。
「お前だろ」
教師は否定しない。
遥は立つ。
廊下に出る。
ドアが閉まる。
中から笑い声。
抑えた笑い。
慣れた笑い。
昼休み。
教師が近くを通る。
遥の机は何もない。
弁当もない。
教師は一度だけ見る。
「食べないのか」
「……うん」
「体調管理しろ」
それだけ。
通り過ぎる。
掃除。
ほうきを持つ。
ゴミ箱が投げられる。
中身が床に散る。
「拾っとけ」
「お前の仕事」
「存在がゴミだから適任」
笑い。
教師が入ってくる。
一瞬だけ状況を見る。
「早く終わらせろ」
それだけ。
放課後。
部活の声が外から聞こえる。
廊下は少し静か。
教室の後ろ。
誰かが言う。
「今日、残って」
「え?」
教師が戻ってくる。
一瞬だけ視線が合う。
何も言わない。
見なかったことにする。
見えているのに。
遥はそのとき、初めて気づく。
もう全員、役割が決まっている。
殴るやつ。
笑うやつ。
見てるだけのやつ。
何も言わないやつ。
そして、
何をされても当然のやつ。
それが自分。
「先生」
思わず呼ぶ。
教師が振り返る。
「なんだ」
少しだけ、言葉が出ない。
「……いえ」
教師は頷く。
「問題起こすなよ」
それだけ言って出ていく。
教室に沈黙が落ちる。
それから、誰かが笑う。
「ほら」
「言わないじゃん」
「助けてくださいって」
「言えないんだよ」
「もう無理だろ」
「ここまで来たら」
遥は机を見ている。
木目。
傷。
落書き。
その中に、小さく書かれている。
「邪魔」
いつ書かれたか分からない。
でも、ずっとあった気がする。
頭の中で、何かが静かに折れる。
音はしない。
ただ、説明する意味が消える。
何を言っても同じ。
何をしなくても同じ。
教師も含めて、
もう全員が理解している。
“そういう役”
として。
遥は思う。
自分は
いつからこうなった?
最初から?
途中から?
分からない。
ただ、
ここではもう変わらない。
教室の中での自分は、
名前でも人でもなく、
ただの役割。
誰かが言う。
「今日さ」
「外行く?」
「いいね」
「連れてく?」
「当然」
笑い。
遥は何も言わない。
言葉が浮かばない。
怒りも、
悔しさも、
もう形にならない。
ただ、
空洞みたいな静けさだけが
中に広がっていく。