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ばた子
放課後、夕焼けのオレンジが町を染めていた。
「よーし、帰るか!」
と元気よく飛び出した大地だったが、数十メートルも進まないうちに、ガタガタと怪しい音。
「え、なんか後ろがぺしゃってる!」
自転車を降りて後輪を触ると、タイヤがふにゃり。完全にパンクだ。
「おい、またネタかよ」
隼人が呆れ顔で近づく。
「いや、さすがにこれは俺のネタじゃない!」
大地は両手を広げて抗議する。
そこへ颯爽と現れたのは柊。バスケ部帰りのジャージ姿が夕陽に映える。
「どうした、大地?」
「パンクっぽい」
「工具あるから見てみるよ」
柊は鞄からスッと工具セットを取り出し、手際よく自転車をひっくり返した。
「え、そんなの持ち歩いてるの!?」
「部活の帰りにパンク多いから、常備してる」
柊の落ち着いた声に、大地は目を丸くする。
「柊ってマジ頼れる〜。なんかドラマの王子様みたい!」
その一言に、隼人の眉がピクリ。
「俺も直せるし!」 と口を挟むが、柊はタイヤを外しながら笑顔で「じゃあ空気入れる係頼むよ」とあっさり。
隼人は空気入れを受け取りつつ、なんとなく面白くない。
その様子を少し離れた場所から見つめる二人――萌絵と涼。
「嫉妬イベント、きたぁ!」
萌絵が小声で身を乗り出す。
「レア隼人、観測中」
と涼はスマホを構えた。
「ほら、もうすぐ直るよ」
柊の言葉どおり、数分で修理完了。大地は両手を合わせて感謝する。
「柊、ありがとう!神!」
「気にすんな。安全運転しろよ」
爽やかな笑顔を残し、柊は手を振って去っていった。
「……なあ大地」
柊の背中が見えなくなったころ、隼人がぼそり。
「はいはい?」
「次、パンクしたら俺に言えよ」
「え、でも柊めっちゃ早かったじゃん」
「うるさい、俺だってできる!」
顔をそむけた隼人の耳が、ほんのり赤い。
「え、なにそれ。ヤキモチ〜?」
「ちがっ……!」
大地はニヤリと笑い、自転車を押して並んだ。
夕焼けの道に、二人の影が少しだけ近づいて重なった。
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