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#読み切り
相談者は入ってきて、椅子に座る前に言った。
「元気なやつってさ」
蓮司は視線を上げる。
「何だ」
「元気じゃなくなるタイミングない?」
「ある」
相談者は座る。
「俺、ない」
「どういう意味だ」
「元気なまま固定されてる」
机の上のペンを触る。
「クラスでも、部活でも、家でも」
「ずっと?」
「ずっと」
「疲れないか」
「めちゃくちゃ」
少し沈黙。
「でも出せない」
「何を」
「元気じゃない自分」
蓮司は頷く。
「キャラだな」
「キャラ」
「一回定着すると外れない」
相談者は笑う。
「元気キャラってさ」
「うん」
「便利なんだよ」
「周りに?」
「周りにも、自分にも」
「どう便利」
「場が止まったら喋ればいい。気まずくなったら笑えばいい。誰か落ちてたら声かければいい」
「役割がはっきりしてる」
「そう」
相談者は机を見る。
「でもさ」
「何」
「俺が落ちてるとき、誰も気づかない」
静かな声だった。
「気づいても、“冗談でしょ”ってなる」
蓮司は何も言わない。
「一回言ったんだよ」
「何を」
「今日ちょっときついって」
「で?」
「“またまた”って笑われた」
短く笑う。
「そこで分かった」
「何が」
「元気キャラって、壊れない前提なんだ」
沈黙。
「電池扱いだな」
「それ」
「減らない前提」
相談者は頷く。
「俺も悪いんだよ」
「何が」
「最初は楽でやってた。元気な方が場回るし、嫌われないし」
「成功した」
「成功した」
少し間。
「成功しすぎた」
蓮司はペンを止める。
「元気キャラの罠はそこだ」
「何」
「信用じゃなくて機能になる」
「機能」
「“いると便利なやつ”」
相談者は苦笑する。
「友達じゃなくて?」
「半分はそう」
沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「壊せ」
「は?」
「元気じゃない日を見せろ」
「怖い」
「知ってる」
「空気悪くなる」
「なる」
「嫌われるかも」
「ある」
相談者はため息をつく。
「リスクしかないじゃん」
「今もリスクある」
「何」
「誰にも本当の状態知られない」
静かになる。
「そのまま続くと」
蓮司が言う。
「お前が限界来たとき、誰も異常に気づかない」
相談者は黙る。
「元気キャラのまま壊れるやつ、結構いる」
長い沈黙。
「一気に壊すな」
蓮司は続ける。
「元気10なら」
「うん」
「8の日を作れ」
「微妙」
「それでいい」
「ちょっと静かにする?」
「それだけでいい」
相談者は少し考える。
「もし誰かに言われたら?」
「何を」
「今日静かじゃね?」
「言え」
「何て」
蓮司は肩をすくめる。
「“今日は元気節約してる”」
相談者は笑う。
「それくらいなら言える」
「それでいい」
立ち上がる。
「元気なやつってさ」
「何」
「元気じゃない日を出すと、人間になる」
相談者は少し止まる。
「今までは?」
「キャラ」
ドアが閉まる。
元気でいるのは強さでもある。
でも、元気しか出せないと、
誰も本当の状態に気づけなくなる。
人に近づくのは、
元気な瞬間じゃなく、
少し弱い瞬間だったりする。
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