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夜十時過ぎ。スマホの通知音が、静まり返った部屋に何度も響いた。

ベッドの上、膝を抱えたまま画面を開く。

グループ名は〈深夜の雑談〉。けれどその名前は、もうずっと前から冗談でしかなかった。


「おーい、みんな生きてる?」


「誰も既読つけねーとか冷たくね?」


「……あ、遥だけ反応してくれんじゃね?」


わざと名前を出す。その瞬間、既読がいくつもついて、メッセージが雪崩れ込んだ。


「そだね、遥はすぐ見るからw」


「律儀に返してくれるのえらいね〜」


「てか今日からルールね。返信、3分以内な。見たら返せ」


既読スルーは“無視”ではなく“違反”になる。

彼らはそれを、ただの遊びの延長線として笑いながら決めた。

でも、誰も知らないふりをしている――それがどれほど残酷かを。


遥の指が、震えながら文字を打つ。


「……わかった」


「おっけー!」


「素直!」


「かわいーじゃん遥w」


スタンプが乱れ飛ぶ。

通知の音が途切れない。

たった一つの「わかった」で、また一晩中、反応を強いられる。


会話はどうでもいい内容ばかりだった。

写真、動画、くだらない悪口。

誰かが寝落ちしたふりをすれば、「遥だけ起きてる」と嘲る。

三分以上空けば、「ルール違反だよ?」と送られる。


時間が経つほど、笑いのスタンプは増えていく。

彼らは遥の苦しむ沈黙を楽しんでいた。

返信を続けることが「存在の証明」になる。

やめれば、次の日の学校で“制裁”が待っている。


画面の光が、無表情の顔を照らしていた。

既読の数字が増えるたび、鼓動が速くなる。

指先の震えだけが、まだ彼が生きている証のように小刻みに動いていた。


無名の灯 番外編3

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