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#読み切り
ruruha
656
ゆうまる
121
その日から、遥は少しだけ変わった。
前より静かになったわけじゃない。
逆だ。
ちゃんと話そうとするようになった。
休み時間。
周りが集まっているところに、遥は一歩近づく。
「なあ、昨日のことなんだけどさ」
誰かがちらっと見る。
でも、逃げない。
それだけで、遥は少しほっとする。
「俺、ああいう言い方したのはさ。
責めたかったわけじゃなくて……」
言葉を選ぶ。
声も、なるべく柔らかくする。
「どうしたらいいか、分かんなかっただけで」
一瞬の沈黙。
それから、誰かが言う。
「ほら。
そういうとこだって」
遥は、慌てて続ける。
「違う、そうじゃなくて。
えっと……俺、空気読めてないのは分かってる」
自分から言う。
先に、傷つけにいく。
「だからさ、言ってくれたら直すし。
迷惑なら、そう言ってくれていい」
その言葉に、笑いが混じる。
「健気だね」
「頑張ってるアピール?」
遥は首を振る。
「アピールじゃない。
ほんとに、普通にしたいだけで」
「普通って何?」
その質問に、詰まる。
(普通って……)
(みんなと同じ、ってことだろ)
「……邪魔にならない感じ」
正直に言ったつもりだった。
でも、その瞬間、
空気が一段、冷える。
「自分で邪魔って言った」
「自覚はあるんだ」
「じゃあさ。
しない方がいいよね、発言」
遥は、焦る。
「いや、だから。
しないって意味じゃなくて」
「言い訳始まった」
「説明長いんだよ」
遥は、息を吸う。
「ごめん、じゃなくて。
俺、分かってもらえなくてもいいから」
一瞬、
本音が出かける。
「俺が何考えてるかだけ、聞いてほしい」
その言葉に、
誰かが少し困った顔をする。
「……重い」
「そういうの、先生に言えば?」
「クラスでやる話じゃないよね」
遥は、口を開いたまま止まる。
(重い……?)
(聞いてほしいって、そんなに変か)
「ごめん。
でも、俺さ」
最後に、もう一度だけ。
「みんなに嫌われたいわけじゃない」
静かに言ったつもりだった。
でも、その一言が決定打になる。
「あー、はいはい」
「被害者ムーブね」
「そうやって言うとさ」
「こっちが悪者になるじゃん」
「気使わせるの、ほんと得意だよね」
遥は、何も言えなくなる。
(……あ)
(俺、今)
(何言っても)
(誰かを困らせるだけなんだ)
それが、はっきり分かる。
「もういい?」
誰かが言う。
「この話、終わりでいいよね」
誰も反対しない。
遥は、小さく頷く。
「……うん」
その返事は、
納得でも同意でもない。
ただ、
これ以上、自分を説明する場所がないと理解しただけ。
(話そうとしたのに)
(ちゃんと考えて、選んで)
(それでも)
(俺が喋るってこと自体が、間違いなんだ)
遥は、その日から気づく。
言葉を出す前に、
自分を消す癖がついたことに。
コメント
1件
うわあ……遥くんの頑張りが全部裏目に出てるのが辛すぎる……。 「ちゃんと話そう」「言葉を選んで」「先に謝ろう」って、めちゃくちゃ努力してるのに、クラスの空気がそれを"重い"とか"被害者ムーブ"で返してくるの、読んでて胸が潰れたよ。特に「自分で邪魔って言った」って拾われて、さらに回収不能になるところ、地獄すぎる……。 この話、遥の変化をちゃんと描いてるのに、周りが変わってくれないもどかしさが痛いほど伝わってきた。「俺が喋るってこと自体が間違い」って結論に辿り着いちゃったのが現実的で、救いがなくて泣ける。続き、どうなっちゃうんだろう……見守るしかないわ。