テラーノベル
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その場に重い沈黙が落ちた。
誰も口を開かない。
遥だけが浅い呼吸を繰り返していた。
晃司がゆっくりと遥を見下ろす。
「一つだけ聞く」
低い声だった。
「最近、お前は何を覚えた」
遥は眉をひそめる。
「……何の話だ」
「質問に質問で返すな」
言葉を遮られる。
「答えろ」
遥は黙り込んだ。
何を答えても間違いになる。
そんなことは分かり切っていた。
「分かりません」
「そうか」
晃司は短く頷いた。
「なら教えてやる」
その一言で、遥の身体が強張る。
「お前は最近、自分で物事を決めるようになった」
「違う」
「まだ最後まで聞いていない」
遮られる。
「返事をする順番も忘れたか」
遥は奥歯を噛んだ。
横で颯馬が鼻で笑う。
「学校で何か変わると、すぐ家でも出る。
顔も。喋り方も。目も。全部分かりやすい」
遥は睨み返した。
「勝手に決めつけんな」
その言葉に、空気が一気に冷えた。
晃司の視線が動く。
「今のは命令口調だな」
遥は息をのむ。
「違っ……」
「違わない」
短く言い切られる。
「最近、否定が増えた。
言い返す回数も増えた。
家の外で覚えたことを、家へ持ち込むな」
遥は何も言えなかった。
持ち込んだつもりなんてない。
ただ。
学校で日下部と話す時間だけは、相手の顔色だけを見て言葉を選ばなくてよかった。
それが少しずつ、自分の中に残ってしまったのかもしれない。
「黙るな」
晃司の声が飛ぶ。
「返事」
「……はい」
「聞こえない」
「はい」
それで終わると思った。
終わらなかった。
颯馬が遥の前にしゃがみ込み、目線を合わせる。
「一個だけ覚えとけ」
笑っているのに、その目は笑っていなかった。
「家で覚えることは一つだ。
ここで教えられたことだけ覚えてろ。
外で何を言われても、何をもらっても、何を覚えても」
ゆぴ
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スミレ
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そこで言葉を切る。
「全部ここで捨てろ」
遥は視線を逸らした。
胸の奥が重い。
缶ジュース。
昼休み。
教室で交わした何気ない言葉。
思い出そうとするたびに、それさえ罪のように感じ始めていた。
その様子を見た颯馬は、小さく笑う。
「その顔。
まだ捨てきれてねぇな」
遥は何も答えなかった。
答えられなかった。
自分でも気づかないうちに、心のどこかに残ってしまったものを、必死に押し込めることしかできなかった。
コメント
1件
第15話読了!めっちゃ苦しかった…晃司と颯馬の圧、重すぎて息できんかった😭💔 特に「全部ここで捨てろ」のセリフ、心臓ぎゅーってなったよ。缶ジュースとか昼休みの会話さえ罪に感じる遥の心情、描写がリアルすぎて胸が痛い。でもその分、学校で日下部といる時のほんの一瞬の自由がキラキラ輝いて見える対比がエモすぎるんだよな…次、どうなるか気になって仕方ない!推すよこの作品!!🌸✨