テラーノベル
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颯馬は遥のポケットへ手を伸ばした。
遥が咄嗟に身を引く。
「触んな」
「その反応がおかしいって言ってんだよ」
腕をつかまれる。
遥は振り払おうとしたが、力では敵わない。
スマホが床へ落ちた。
乾いた音が部屋に響く。
颯馬はしゃがみ込み、何の躊躇もなく拾い上げる。
「返せ」
遥が一歩踏み出す。
晃司の視線が向いた。
「動くな」
その一言で足が止まる。
止まらざるを得なかった。
颯馬は画面を点ける。
「ロック?」
笑う。
「甘いな」
遥の指を無理やり画面に押し当てる。
認証音。
画面が開く。
遥の胸が冷たく沈んだ。
通知欄の一番上。
日下部の名前。
短いメッセージが表示されていた。
「今日は大丈夫か?」
部屋が静まり返る。
颯馬は声を出さずに笑う。
「……へぇ」
画面を指でなぞる。
「毎日か?」
遥は答えない。
「返事しろ」
「関係ない」
「関係あるから聞いてる」
颯馬はトーク画面を開いた。
画面には何気ないやり取りが並んでいる。
『補習終わった?』
『飯ちゃんと食えよ』
『無理すんな』
どれも短い。
それでも颯馬には十分だった。
「気持ち悪ぃ」
吐き捨てるように言う。
「心配されて嬉しかったか?」
遥は睨み返す。
「返せ」
「命令?」
「返せ」
颯馬は画面を晃司へ向けた。
「見ろよ。
こいつ、外じゃこんなふうに世話焼かれてる」
沙耶香が覗き込む。
「ずいぶん親切なんだ」
怜央菜は小さく笑った。
「だから最近変だったのね」
遥は拳を握り締める。
否定したかった。
違う、と。
けれど否定すればするほど、この家では材料が増えるだけだ。
颯馬は画面を閉じることなく、遥を見た。
「覚えとけ。
お前のものは、お前だけのものじゃない」
その言葉は、スマホだけを指してはいなかった。
遥はそれを理解していた。
だからこそ、何も言えなかった。
ゆぴ
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スミレ
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コメント
1件
あー、これ重い…。颯馬の「甘いな」からの指押し当ててロック解除、マジで胸糞悪くなった。日下部からの「今日は大丈夫か?」とか「無理すんな」っていう何気ない気遣いが、この家じゃ全部「気持ち悪ぃ」って武器にされるんだよな…。晃司の「動くな」一言で足が止まる遥の無力感、すごく伝わってきた。ラストの「お前のものはお前だけのものじゃない」、スマホだけじゃなくて遥自身も縛られてる感じがゾッとした。続きどうなるかめっちゃ気になる…!