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蓮司の相談室3

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蓮司の相談室3

21 - 第21話 期待されると壊したくなる

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2026年03月03日

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相談者は座ってから少し黙っていたが、やがて言った。


「期待されると、逃げたくなる」


蓮司は視線を上げる。


「できないから?」

「できる。たぶん。だから余計きつい」

「どうきつい」

「“お前ならいける”“頼りにしてる”“次も任せる”って言われると、急に壊したくなる。わざとサボりたくなる。提出遅らせたくなる。期待通りに動きたくなくなる」


蓮司は少し考える。


「裏切りたい?」

「裏切りたいっていうか……縛られたくない」

「正解」


相談者は眉を寄せる。


「期待ってさ、信用っぽい顔してるけど、役割固定でもある」

「役割」

「“できるやつ”枠に入れられる。入った瞬間、失敗の余白が減る」

「それだ」


相談者は机を見る。


「一回できたら、次もできる前提。落ちたら“どうした?”になる。普通でいられない」

「普通を許されなくなる感覚な」

「そう。だから先に壊したくなる。自分で落とせば、失望じゃなくて選択になる」


少し沈黙。


「それ、自衛だ」

「自衛?」

「勝手に高くされる前に、自分で高さ下げてる」

「でもさ」

「何だ」

「ほんとは、ちゃんとやりたい」

「だろうな」

「なのに直前で投げたくなる」


蓮司は机を軽く叩く。


「期待=監視に変換してる」

「監視?」

「見られてる、評価されてる、落ちたら終わる、って脳内で拡大してる」

「拡大してる自覚ある」

「期待は願望だ。命令じゃない」

「でも断れない」

「断らなくていい。期待と成果を分離しろ」

「どうやって」

「“任せる”って言われたら、“やれる範囲でやる”って言え。満点前提にするな」

「ハードル下げる?」

「自分で設定する。相手に決めさせるな」


相談者は少し笑う。


「俺が勝手に完璧やろうとして、勝手に潰れてた?」

「だいたいそれ」


沈黙。


「壊したくなるのって、最低?」

「むしろ正常。自由を守ろうとしてる」

「自由」

「期待を受けても、逃げ道を持て。“今回だけ”“ここまでならやる”“無理なら言う”。全部飲むから爆発する」


立ち上がる。


「期待されるの嫌いじゃない」

「知ってる」

「でも怖い」

「怖いままでいい。壊す前に、線引け」


ドアの前で止まる。


「もし失敗したら?」

「失敗は壊すことじゃない。壊すのは、自分で全部放り投げることだ」


相談者は小さく息を吐く。


「今日は放り投げない」

「それで十分」


ドアが閉まる。


期待が重いのは、

できるからだ。

壊したくなるのは、

自由を守りたいからだ。

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