テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
翌日。
一限の教室。
蒼はいつもより少し早く教室へ入った。
教室にはまだ人が少ない。
窓際の席。
凪がいつも座る場所。
誰もいない。
蒼は気にも留めず、自分の席に荷物を置いた。
「まだ来てないだけか」
小さく呟く。
講義開始のチャイムが鳴る。
教授が入ってくる。
それでも。
席は空いたままだった。
昼休み。
「凪いないな」
誰かが言った。
「昨日のあとだから?」
「寝坊じゃね」
笑い声が上がる。
でも、その話題はすぐ別の話へ流れていった。
蒼も何も言わなかった。
二日目。
また空席だった。
教授が出席を取る。
「……凪」
返事はない。
「欠席、と」
それだけ。
誰も反応しない。
大学では珍しいことではない。
一人来なくなっても、講義は進む。
三日目。
「まだ休み?」
友人が蒼に聞く。
「知らね」
蒼はスマホを見たまま答えた。
「連絡してねえし」
「へえ」
「意外」
「なんで」
「いつも一緒じゃん」
蒼は顔を上げた。
「別に」
短く返す。
その話は終わった。
夜。
部屋に帰る。
スマホを机へ放る。
画面が光る。
通知はない。
蒼は何となく連絡先を開いた。
凪。
指が止まる。
数秒見つめて。
画面を閉じた。
「……」
何を送るつもりだったのか、自分でも分からなかった。
四日目。
講義が終わる。
教室を出ようとした蒼の横で、沙希が歩調を合わせた。
「まだ来ないね」
「ああ」
「連絡した?」
「してない」
沙希は少し笑った。
「意外」
蒼は肩をすくめる。
「来たくなったら来るだろ」
そう言った。
けれど。
その言葉には以前ほどの確信はなかった。
沙希は蒼の横顔を見つめる。
「……本当に?」
蒼は答えない。
二人の前を学生たちが通り過ぎていく。
誰も凪のことなど気にしていない。
大学は、誰か一人がいなくなっても回り続ける場所だった。
その静けさだけが、蒼には妙に落ち着かなかった。
コメント
1件
うわ、このエピソード、めちゃくちゃ胸にくる……。蒼が「連絡してねえし」って言いながら、スマホの連絡先で指が止まるところ、すごくリアルだった。凪が消えた空白を周りはすぐ埋めていくのに、蒼だけはその静けさに違和感を覚えてる。その対比が切なくて、思わず「連絡しろよ!」って心の中で叫んじゃったよ。次、どうなるんだろ……。
#雑談
寿命㌫(主)
10,690
ai _ .
1,950