「よし、次は別の遊びな」
一人が笑いながらトイレのブラシを掴み上げた。毛先は茶色く汚れている。
「シャンプーの後は、これで仕上げだろ?」
「うわ、最悪。けど絶対面白い」
「おい、じっとしてろよ」
遥の髪をつかみ、強引に顔を上げさせる。ブラシの硬い毛が頬を擦るたび、皮膚がヒリヒリと痛み、鼻を突く異臭が広がった。
「や、やめ……っ」
震える声を無視して、別の加害者がブラシを頭皮に押し当てる。
「ほら、ゴシゴシ! シャンプー仕上げ!」
「やば、泡立ってんじゃん!」
泡に混じって血がにじみ、額を伝って流れ落ちる。
「なぁ、次は床も磨かせようぜ。顔で」
「いいな、それ!」
腕を後ろで押さえられ、無理やり床に押し付けられる。濡れた髪と頬で冷たいタイルを擦らされ、掃除の真似事を強制された。
「ほら、きれいにしろよ。まだ汚れてんぞ」
「そうそう、雑巾代わりだ。もっと力入れろ!」
押し付けられた顔から呻き声が漏れる。
「……お願い、もう……やめて……」
その言葉に、取り囲む声が一斉に笑い声をあげる。
「聞いたか? やっと雑巾がしゃべったぞ」
「“お願い”だって! だせえ!」
「もっと頼めよ、ちゃんと土下座でさ!」
片方の足を踏まれ、火傷の痕に重みがかかる。遥の体が硬直し、かすれた声が漏れた。
「……っ……ごめ……なさい……」
「おー、やっと言えた!」
「謝っても許さねえけどな」
さらに追い打ちをかけるように、誰かが便器の水をすくって顔にぶちまける。冷たい水が全身を濡らし、肌の火傷跡がひきつった。
「なあ、そろそろ仕上げにすんね?」
「そうだな。最後は――飲ませて終わりでいいんじゃね?」
「おい、口開けろよ」
顎をつかまれ、濡れた手が無理やり口をこじ開ける。次の瞬間、便器の水をすくって口元へ押し付けられた。
「やめ……っ! やめて!!」
必死に首を振るが、数人がかりで押さえられ、冷たい水が口内に流し込まれる。臭気と吐き気で喉が詰まり、咳き込みながら吐き出した。
「ははっ、こぼしてんじゃねーよ!」
「もっと飲めよ、ほら!」
「お前のご飯だろ!」
その場に響くのは、笑い声と咳き込む音だけ。
遥の体は震え、膝は崩れ落ちる。だが誰も止めようとしない。むしろその姿を眺めて、さらに満足そうに笑っていた。
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