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相談者は座るなり言った。
「仲いいと思ってたの、俺だけだった」
蓮司は表情を変えない。
「何があった」
「遊んだ」
「どこ」
「普通に。飯食って、だらだら喋って」
「楽しかった?」
「楽しかった」
少し間。
「帰ったあと、SNS見た」
「それで」
「写真が上がってた」
「その日の?」
「そう」
「で?」
相談者は机を指でなぞる。
「俺、いない」
沈黙。
「写ってないだけじゃなくて?」
「何枚もある」
「全部?」
「全部」
相談者は苦笑した。
「でも同じ場所にいた。
同じ時間に 同じグループで。
なのに」
少し声が軽くなる。
「存在してないみたい」
蓮司は少し考える。
「他のやつは?」
「写ってる」
「なるほど」
沈黙。
「なんかさ」
相談者が言う。
「気づくんだよ」
「何に」
「温度差」
蓮司は頷く。
「俺は“仲いい”と思ってた」
「でも向こうは?」
「普通の友達」
相談者は笑う。
「一段階下」
「それ、珍しくない」
「救いないな」
「ある」
「どこ」
蓮司は背もたれに寄りかかる。
「人間関係って対称じゃない」
「対称?」
「同じ熱量とは限らない」
相談者は眉を寄せる。
「例えば、お前が8相手が5。普通にある」
「逆も?」
「ある。お前5相手8」
相談者は少し考える。
「……確かに」
沈黙。
「でもさ」
「何」
「俺だけ仲いいと思ってたって」
少し言葉を選ぶ。
「結構恥ずかしい」
蓮司は首を振る。
「恥じゃない」
「勘違いじゃん」
「違う」
「どこが」
「お前は本当に仲いいと思ってた。それは事実」
相談者は黙る。
「勘違いってのは」
蓮司が続ける。
「嘘を信じてた時だ。今回は違う。温度が違っただけ」
少し長い沈黙。
「じゃあどうすればいい」
「何を」
「距離」
蓮司は言う。
「少し下げろ」
「下げる?」
「お前は8だった。6くらいにする」
相談者は笑う。
「調整か」
「そう」
机の上の沈黙。
「人間関係って」
蓮司が言う。
「固定じゃない。
近づくこともある。離れることもある。
その途中で揺れる」
相談者は考える。
「俺。距離詰めすぎた?」
「たぶんな」
天井を見る。
「でもさ」
「何」
「嫌いじゃないんだよ」
小さな声だった。
「向こうも多分嫌いじゃない」
蓮司は言う。
「なら壊れてない」
相談者は立ち上がる。
「仲いいの定義、勘違いしてたかも」
ドアの前で振り返る。
「友達って、段階あるんだな」
蓮司は頷く。
人間関係は、同じ温度で始まるわけじゃない。
同じ場所にいても、同じ距離にいるとは限らないからだ。