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扉が開く音は、救いではなく、裁きの音だった。
光の筋の中に立つ教師の影が、倉庫の床に長く伸びる。
その足音が近づくたび、遥の体は勝手に震えた。
「まただな。……何回目だ、これで」
吐き捨てるような声。
静かに笑っているような気配。だがそれは笑顔ではなく、冷笑だった。
「閉じこもって、何を考えてる。逃げてるだけじゃないか」
教師の靴先が遥の肩を小突く。
体が揺れ、擦り傷の痛みに息が詰まる。
「お前のせいで、どれだけ手間が増えてるか分かってるか?」
「心配してやってるんだぞ。……感謝くらいしろ」
その言葉に、遥は思わず顔を上げる。
だが、目が合った瞬間、教師の手が頬を叩いた。
音が鋭く響き、頭の中が白く弾ける。
「目を逸らすな。人の話を聞く態度じゃないだろ」
平手の痕が焼けるように熱い。
教師はゆっくりしゃがみ込み、耳元で囁いた。
「お前の兄たちはちゃんとしてるのにな。どうしてお前だけ、こうなんだ?」
その声にはあざけりと嘲笑が混じっている。
「人間として欠けてるんじゃないのか?」
「努力もできない。友達もいない。……そんな奴、どうしようもないだろ」
言葉の刃が一つ一つ突き刺さるたび、呼吸が浅くなる。
教師は立ち上がり、ため息をついた。
「泣いても無駄だ。……泣いてる暇があるなら、少しはまともになれ」
そのまま腕を掴まれ、乱暴に引き起こされる。
膝が痛み、視界がぐらつく。
「立て。みんなの前で謝れ。自分が迷惑かけたってな」
倉庫を出る瞬間、背後で教師の声が追い打ちのように響く。
「——お前みたいなのを甘やかすから、世の中が腐るんだ」
廊下の明るさが、痛みよりも眩しかった。
周囲の視線が、冷笑と軽蔑に満ちて刺さる。
遥は立っているのに、立っていないようだった。
心が、どこにも居場所を見つけられないまま。