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中学二年生・仮名:Kさん
「本当の自分でいよう」とか、よく聞きますが、その“本当の自分”が何なのか分かりません。
人に合わせている自分は嘘な気がするし、でも一人のときの自分が本当とも言い切れません。
どれも自分な気もするし、どれも違う気もします。
「自分らしく」と言われても、何を基準にすればいいのか分からないです。
本当の自分ってあるものなんでしょうか。
遥
「これもよくあるやつだな」
蓮司
「でかいテーマ」
日下部
「言葉が先に広まりすぎた例」
Kさん
「言葉が」
遥
「“本当の自分”って言葉」
少し間。
「分かりやすいけど誤解されやすい」
Kさん
「誤解」
蓮司
「一個の“正解の自分”があるみたいに聞こえる」
Kさん
「……確かに」
遥
「でも」
静かに言う。
「たぶんそういうものじゃない」
Kさん
「じゃあ」
遥
「まず前提」
少し姿勢を変える。
「人は状況で変わる」
Kさん
「はい」
日下部
「環境。相手。立場」
Kさん
「全部で変わります」
蓮司
「それ全部嘘かって言われると」
肩をすくめる。
「違うよな」
Kさん
「違います」
遥
「合わせてる自分も一人のときの自分も」
少しゆっくり。
「どっちも本物」
Kさん
「両方」
日下部
「“本当の自分=一つ”という前提がズレている可能性がある」
Kさんは黙る。
「じゃあ」
少し迷う。
「本当の自分ってないんですか」
遥
「“固定された一つ”はないと思う」
Kさん
「固定」
蓮司
「RPGの職業みたいにこれですって決まってる感じじゃない」
Kさん
「……」
遥
「代わりにあるのは」
少し言葉を選ぶ。
「“選び方の癖”」
Kさん
「癖」
日下部
「何を選ぶか、どう反応するか」
静かな声。
「それが積み重なってその人らしさになる」
Kさん
「でも」
少し考える。
「人に合わせてるときって自分で選んでる感じがしません」
遥
「半分は無意識」
蓮司
「でも完全に強制でもない」
Kさん
「どういうことですか」
遥
「例えば」
少し間。
「合わせるっていう選択をしてるとも言える」
Kさん
「……」
日下部
「その選択の理由も含めてその人だ」
Kさん
「理由」
蓮司
「空気壊したくないとか」
遥
「嫌われたくないとか」
日下部
「関係を保ちたいとか」
Kさんは少し俯く。
「それって」
小さく言う。
「弱い自分じゃないですか」
遥
「弱さではある」
少し間。
「でもそれも自分の一部」
Kさん
「……」
蓮司
「強い部分だけ集めても人間にならないしな」
Kさんは少し笑う。
日下部
「“本当の自分”を探すというより」
ゆっくり言う。
「自分の中にあるものを認識していく方が近い」
Kさん
「認識」
遥
「こういうときは合わせる
こういうときは黙る
こういうときは言う」
少し視線を落とす。
「それ全部、自分のパターン」
Kさん
「パターン」
蓮司
「で」
指を軽く立てる。
「少しずつ選べるようになる」
Kさん
「選べる」
遥
「全部を急に変える必要はない」
Kさんは考える。
「じゃあ」
ゆっくり言う。
「“自分らしくする”ってどういうことなんですか」
遥
「難しい言い方すると」
少しだけ笑う。
「自分の選択に自分で気づいてる状態」
Kさん
「気づいてる」
蓮司
「無意識で流されるんじゃなくて」
遥
「“今合わせてるな”って分かってる」
Kさん
「……」
日下部
「その自覚があるだけで主体性は変わる」
Kさんはしばらく黙る。
「本当の自分って」
小さく言う。
「探して見つかるものだと思ってました」
遥
「見つかるっていうより」
少し間。
「気づいていく感じ」
蓮司
「あと」
肩をすくめる。
「増えていく」
Kさん
「増える」
遥
「経験で選択肢も増える」
日下部
「人は固定された存在ではない」
静かな声。
「変化し続けるものだ」
Kさんは立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「一つじゃなくてもいいなら」
少し息を吐く。
「少し楽かもしれません」
遥
「たぶんな」
蓮司
「一個に決める方がむしろしんどい」
日下部
「多面性を持つことは不安定ではなく自然な状態であるってことだ」
Kさんは小さく頷いた。
ドアが閉まる。
少し静かになる。
蓮司が言う。
「“本当の自分探し”って迷路だよな」
遥
「出口ないタイプのな」
日下部はゆっくり言う。
「人は」
少し間。
「探すより気づくことで自分を知る」