テラーノベル
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ドアが開く。
「……失礼します」
「どうぞ」
生徒は入ってきて座る。
カバンを膝の上に置いたまま話し始める。
「クラス替えしてから」
日下部は目を向ける。
「なんか、ずっと落ち着かなくて」
視線が落ちる。
「最初はみんな同じだと思ってたんですけど。気づいたら、もうグループできてて」
少し間。
「自分だけ、まだ“どこにもいない感じ”なんです」
短く息を吐く。
「話す人はいるんですけど。休み時間とかになると、急に行く場所なくなるというか」
「“所属感”がまだないな」
日下部は言う。
生徒は小さく頷く。
「……はい」
「教室にいても、“自分の席だけ借り物”みたいな感じします」
日下部は少し間を置く。
「クラス替え直後って」
短く言う。
「“もう馴染んでる風”出すやつ多い」
生徒は少し顔を上げる。
「……風?」
「実際は不安でも、とりあえず固まってる。だから、“みんな完成してる”ように見えやすい」
生徒は黙る。
「でも、自分だけ本当に浮いてる気して。 昼休みとか特にきついです」
「昼休みは、“誰といるか”見えやすいからな」
日下部は言う。
生徒は苦笑する。
「……はい。
じゃあ、どうすればいいですか」
日下部は少し考える。
「“仲いいグループ作ろう”から入らない」
生徒は止まる。
「え」
「最初は、“話す場所を固定する”くらいでいい」
短く言う。
「固定?」
「朝ちょっと話すやつ。
移動教室一緒になるやつ。
隣で課題確認するやつ。
小さい接点を増やす」
生徒は黙る。
「自分、“ちゃんと居場所作らなきゃ”って焦ってました」
「それやると、逆に空回ることある」
短く返る。
「あと」
「はい」
「最初からグループの中心入ろうとしない」
日下部は言う。
「端からで十分」
生徒は少し考える。
「……自分、馴染めてない=終わりだと思ってました」
「四月五月で完成する人間関係ばかりじゃない」
短く言う。
生徒はゆっくり頷く。
立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「“まだ途中”って思うようにします」
「その方が息しやすい」
短く返る。
ドアが閉まる。
クラス替えの不安は、“友達がいない”より、“自分の位置が決まらない”ことから来る。
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