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ドアが少しだけ開いた。
「いる?」
「いる」
入ってきた相談者が椅子に座る。
鞄を足元に置いて、机の角を指でなぞる。
「なあ」
「ん」
「本音ってさ」
「うん」
「どのくらい言っていい」
「場所による」
「ここは?」
「言っていい」
相談者は少しだけ黙る。
「言うとさ」
「うん」
「重いって言われるんだよ」
「誰に」
「だいたい全員」
蓮司は頷いた。
「あるあるだな」
「あるの?」
「ある」
相談者は苦笑する。
「俺さ、別に暗いこと言ってるつもりないんだよ」
「うん」
「普通に困ってること言うだけ」
「うん」
「でも」
机を軽く叩く。
「空気止まる」
「止まるな」
「で」
「うん」
「なんか俺が空気壊したみたいになる」
「なるな」
少し沈黙。
「だから最近」
「うん」
「浅いことしか言わない」
「天気とか」
「それ」
「安全」
「安全」
相談者は天井を見る。
「でもさ」
「うん」
「ずっと浅いのもしんどい」
「だろうな」
「誰にも深いこと言わないのって」
「酸欠」
「それ」
蓮司は机に肘をつく。
「重いって言われる人さ」
「うん」
「量が多いんじゃない」
「違う?」
「深度が深い」
相談者は少し止まる。
「……深度」
「表面じゃなくて下の話するだろ」
「する」
「だから潜らない人には深海」
「潜水服ないと無理」
「そう」
相談者は笑った。
「じゃあ俺が悪いわけじゃない?」
「悪くはない」
「でも嫌がられる」
「装備ない相手に深海ツアー誘ってる状態」
「例え」
「分かるだろ」
「分かる」
少し間。
「じゃあどうすんの」
「相手選ぶ」
「それが難しい」
「最初から全部出すな」
「小出し?」
「水深10メートルから」
相談者は考える。
「反応見て」
「うん」
「潜れそうなら」
「少し深く」
「無理そうなら」
「浅瀬で泳ぐ」
相談者は頷く。
「それならできそう」
「あと」
「うん」
「重いって言われた回数で」
「うん」
「自分の価値決めるな」
「……それな」
少し沈黙。
「俺さ」
「うん」
「深い話できる人、欲しい」
「いるだろ」
「どこ」
「探してないだけ」
「怖くてな」
「分かる」
蓮司は少しだけ肩をすくめる。
「まあ」
「うん」
「ここでは別に」
「うん」
「水深制限ない」
相談者は少し笑った。
「助かる」
「たまにでいい」
「うん」
「全部浅瀬だと息詰まる」
「詰まる」
相談者は立ち上がる。
「じゃあ今日」
「うん」
「一人だけ」
「うん」
「10メートルまで出してみる」
「いいな」
「沈んだら?」
「戻ってこい」
相談者は小さく笑う。
「了解」
ドアの前で止まる。
「なあ」
「なに」
「俺、重い?」
「深いだけ」
相談者は少しだけ息を吐いた。
「それならまあ」
ドアが閉まる。
本音が重いんじゃない。
深度が合ってないだけだ。
潜れる相手は少ないけど、ゼロじゃない。