テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
放課後。
教室の奥、窓際だけ光が強い。
生徒は座らずに立っている。
居場所が決まってないみたいに。
「自分だけ浮いてる気がするんです」
遥は椅子に座ったまま、足を少し引く。
「どの場面で」
「教室」
間を置かず返ってくる。
「入った瞬間とか、輪に入ってる時も」
言葉が止まらない。
「ちゃんと話してるのに、外側にいる感じが抜けない」
机の端に触れる。
「別に無視されてるわけじゃないです。 普通に会話もあるし、笑う時もある」
一度息を吸う。
「でも、なんか」
言い直す。
「地面に足ついてない感じになる」
遥は視線を動かさない。
「自分の中で線引いてるな」
「……線?」
「ここまでが自分で、ここから外、みたいな」
間。
「その線、外にあると思ってる」
教室は静か。
「違うんですか」
「内側だ」
短い。
「自分で引いてる」
生徒は少しだけ眉を寄せる。
「でも実際、馴染んでる人と違う感じはあります」
「あるだろうな」
否定しない。
「でもそれを“浮いてる”って名前にしてる」
「名前」
「そう呼ぶと、全部そこに集まる」
机に指先を置く。
「少しズレた反応も、間が合わなかったのも、全部“浮いてる証拠”になる」
生徒は何も言わない。
「で、余計に線が濃くなる」
呼吸が少し浅くなる。
「じゃあどうすればいいですか」
遥は少し考える。
「“浮いてるかどうか”で見ない」
「……何で見ればいいんですか」
「機能」
短く。
「会話できてるか。返ってきてるか。成立してるか」
一拍。
「そこだけ見る」
生徒は視線を上げる。
「感覚じゃなくて事実で切る」
遥は続ける。
「浮いてる感覚は消えない。消そうとするほど残る」
教室の外で足音が響く。
「だから無視する」
「……できるかな」
小さく出る。
「できなくてもいい」
すぐ返す。
「判断基準を変えろ」
生徒は息を吐く。
「浮いてるかどうかじゃなくて、成立してるか」
自分で言い直す。
「それなら」
少し間。
「見れるかもしれない」
遥は何も言わない。
生徒は立ったまま、少しだけ位置を変える。
さっきより壁から離れている。
浮いてるかどうかは、感覚の話だ。
でも、その場で起きてることは別にある。
混ぜると、ずっと外側になる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!