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管野アリオ
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Jasmine
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『第一巡選択希望選手、福岡ハードバンクファルコンズ、高西賢。投手、藤森学園高校』
賢は、福岡ハードバンクファルコンズから、単独で一位指名を受けた。
テレビモニターから賢の名前が呼ばれると、無数のフラッシュに焚かれ、ぎこちない笑みを滲ませた彼。
『高西選手、ボールを掲げてこちらに笑顔をお願いします』
賢は、笑顔の仮面を貼り付けながら野球部の顧問からボールを受け取ると、報道陣の要望通りにポーズを作った。
その瞬間、青白い炎が巻き上がるように、夥しいシャッター音と閃光が賢を包み込む。
記者会見が始まり、彼は報道陣の質問に淡々と答えた後、野球部の部員たちから胴上げをされた。
笑顔を向けながら、賢は指名が掛かった安堵感と、志絵の落ち込んだ表情が脳裏を掠めていく。
福岡に行ったら、簡単に彼女と会えるわけではない。
会えるとしたら、オフシーズンに東京へ帰省した時だろう。
彼の中で、志絵の虚無感に覆われた表情が、消えずに残ったまま。
(福岡へ発(た)つ前に……アイツに気持ちを伝えないと……)
上背のある身体が宙に舞い上がりながらも、俯瞰している『もう一人の自分』が冷静に賢を見つめていた。
だが、ドラフト会議以降、賢と志絵は会話を交わす機会が、ほぼなくなってしまう。
志絵は十一月以降、授業の後は急いで帰宅しているようだった。
そんな中、放課後の昇降口で、賢が靴を履き替えようとしている時、志絵が小走りで彼の横を通り過ぎようとしていたところを、咄嗟に声を掛ける。
『総長……!』
賢の声に志絵がピタリと止まり、クルッと振り返った。
『あ、高西。お疲れ! ファルコンズに入団するんでしょ? おめでとう! 良かったね!』
以前よりも多少元気が出たのか、彼は彼女に微笑まれる。
『ああ。サンキュー。プロの世界に……チャレンジする事にしたんだ。総長も忙しそうだな。塾にでも行くのか?』
『ううん。私、音大受験するから大学の先生にレッスンしてもらってるんだ。今日は声楽のレッスン』
『へ? 声楽?』
『うん。簡単に言えば、歌のレッスンだよ。サックスとピアノのレッスンも受けに行ってるから、練習とレッスンで毎日バタバタだよ』
キャットアイの目尻を下げ、微苦笑している志絵を、やっぱり可愛い、と賢は思ってしまう。
『なぁ、総長…………。あのさ、俺──』
『高西ゴメン! そろそろ行かないとレッスンに遅れちゃうから、またねっ! お疲れさまっ』
賢の言葉を遮るように、志絵が慌てて上履きから黒いローファーに履き替えると、手を小さく振りながら駆け出す。
『あっ……ああ、ゴメン。またな。お疲れ』
嵐のように過ぎ去った志絵の背中を、呆然としながら見送る賢だったが、このやり取り以降、二人は会話を交わす事なく、卒業を迎えた。
コメント
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お疲れさまです、管野アリオさん。第17話、読み終えました。 賢がドラフトで一位指名される場面、すごくリアルで引き込まれました。あの煌びやかなフラッシュのなかで、彼の頭の片隅に志絵ちゃんの落ち込んだ表情がよぎるのが、もう切なくて。プロ入りの喜びと、彼女との距離が広がる予感が同時に描かれていて、胸がぎゅっとなりました。 昇降口で声をかけたシーンも印象的です。言いかけた「俺──」を遮られちゃうもどかしさ……お互いがお互いの道を走り出していて、すれ違う気配が漂っていて、青春のほろ苦さを感じました。綺麗なまますれ違う二人の行く末、すごく気になります。続きも楽しみにしていますね🌷