テラーノベル
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その頃、夏帆と透也は食事を楽しみながら、穏やかに会話を弾ませていた。
燻製サーモンとマスカルポーネのマリアージュ
蛸と温野菜のバジルソースサラダ
パーナ貝の白ワイン蒸し
丁寧に仕上げられた料理は美味で、メインの和牛特製ビーフシチューも、とろけるような美味しさだった。
「美味しーい」
「だろ? 俺も久しぶりだったから、夏帆ちゃん誘って来てよかったよ」
(久しぶりってことは……以前誰かと来たんだ。絶対女性だろうな~)
夏帆の脳裏には、ホストの透也が綺麗な姫をエスコートしてこの店に入る光景が浮かんでいた。
そんな夏帆の想像など知らぬまま、透也が話題を変える。
「それより、転職活動はどう? 決まりそう?」
「あ、はい。とりあえず受けてみようかなって会社は見つかったんですが……たぶん無理かなぁ」
「人気の会社なんだ」
「はい」
「そっか。まあ、もしダメでも俺から紹介できるところあるから。落ちても気落ちせずに頑張れ~」
「ありがとうございます」
出会ったばかりなのに、ここまで気にかけてくれる透也に、夏帆の胸には自然と感謝が芽生えていく。
(見た目はゆるふわなのに、意外と面倒見のいい“兄貴分”タイプなんだ……)
夏帆の中で、透也に対する印象が少しずつ変わっていた。
デザートが来る前に、夏帆は一度化粧室へ立った。
鏡の前で髪を整えていると、バッグの中で携帯がチカチカ光っているのが目に入る。
(駿介から?)
そう思いながらメッセージを開く。
【どういうことだよ! なんでお前、今、中条といるんだ? きちんと説明しろよ】
(え? この人何言ってんの……? 頭おかしくなっちゃった?)
席に戻ると、夏帆は透也に携帯を見せた。
「彼がこんなこと言ってきたんですけど……意味分からないですよね?」
透也は画面をじっと見つめ、夏帆に尋ねた。
「ちょっと聞いてもいい? 君の元彼って、なんて名前?」
「伊坂駿介です」
「……」
「どうしたんですか?」
「……彼、仕事は何してるの?」
「私が前にいた花田証券でトレーダーをやってます」
「……やっぱりそうか」
透也は少し驚いた表情を浮かべ、しばらく黙ったあと口を開いた。
「俺、伊坂と同級生なんだ。高校時代のね」
「えっ? ええーっ?」
夏帆は思わず大きくのけぞった。
「本当ですか?」
「うん。あいつと俺は私立の進学校に通ってて、部活で一緒だったんだ」
「部活? ということは“投資部”ですか?」
「夏帆ちゃん、知ってるんだ」
「はい。高校時代から投資をやってたって聞いたことがあります」
「そっか……。俺たちの高校は当時では珍しく、学校が資金を生徒に託して、リアルに投資をさせてたんだ。もちろん、顧問管理のもとでね」
「今はわりとそういう学校ありますけど、当時では珍しいですね」
「うん。で、儲かったら慈善団体に寄付する決まりなんだけど、そこで俺たちはいつもライバルだったんだ」
「ライバル?」
「うん。一年間の投資成績が年末に発表されて、いつも伊坂と競い合ってた」
「そうだったんですか……。それにしても、すごい偶然でびっくりしました」
「俺も驚いたよ。まさか夏帆ちゃんの元彼が伊坂だとはね~。彼とは長く付き合ったの?」
「いえ……。一年半弱くらいかな?」
「そっか。そんなに長くないんだ」
「はい」
「別れた原因は、伊坂を寝取られたって言ってたけど、同じ会社の子?」
「はい。私よりも四期下の後輩です。駿介よりは一回り年下かな? とっても可愛くて、社内一の人気って言われてる子です」
夏帆はため息をついた。
「ははっ、あいつは相変わらずだな。今でも若さや見た目で選んでるのか」
「……というと?」
「高校のときからそうだったんだよ。付き合う子はいつも見た目だけで選んで、中身を見ない。話が合うとか、一緒にいて楽しいとか……そういう大事な基準は後回し。夏帆ちゃんも美人だから“やっぱり”と思ったけどね」
慰めるような言葉に、夏帆は少し救われた気がした。
「でも、振られたのは私にも原因があったと思います」
「原因? どんな?」
「彼はいつも他人の目を気にしていて、私に対しても常に綺麗でいろとか、ブランドのいい物を持てとか……とにかく口うるさくて。私は疑問に思ってたんですけど、喧嘩になるのが嫌でつい合わせてしまって……。本当はもっと自分の意見を主張すべきだったのかなって。自分を押し殺して無理して付き合っても、続かないですよね」
夏帆は寂しそうに笑った。
すると透也が穏やかな声で言う。
「相手に合わせる必要なんてないよ。自然体のままでいられる相手を探さなくちゃ。まあ、夏帆ちゃんは美人だから、外見重視の男が寄ってくるのは運が悪いけどね」
「私、美人じゃないですよ」
「俺から見たら十分綺麗だよ」
「あ、ありがとうございます」
夏帆は顔を真っ赤にして照れた。
(さすが、女をおだてる言葉には慣れてるのね……)
そう思いながらも、褒められるとやっぱり嬉しい。
「私、あのマンションへ引っ越すとき、全部捨ててきたんです」
「捨てた?」
「はい。この機会にミニマリストになろうって、ほとんどのものを処分したんです」
「そっか……。それは潔くていいね」
「で、全部捨てたらすごくすっきりして、今はもう駿介への未練もないし、会社を辞めたことも後悔してないし……ここから新しい人生が始まるって思ったら、なんだかわくわくしてきて」
夏帆が楽しそうに微笑むと、透也は一瞬その笑顔に見とれた。
「そっか……いいねぇ、その感じ。あ、ちなみに、俺もわりとミニマリストよ」
「本当ですか?」
「うん。物にはまったく執着ないんだ」
「だったら、お部屋はすっきり?」
「うん。ホテルみたいに最小限のものしかないよ」
「わあ……いいですね。私もそのくらいまで減らしたいんですけど、なかなかそこまでは……」
「まあ、減らしすぎも殺風景だから、多少はあってもいいと思うよ」
「でも、中条さんのお部屋には何もないんですよね?」
「うん。俺は家で仕事をすることもあるから、余計なノイズを入れないためにもすっきりさせてる」
「家でお仕事を……?」
(ホストって、家でやる仕事ってあったっけ?)
夏帆は不思議に思いながら、次第に自分が透也の私生活に興味を持ち始めていることに気づいた。
瑠璃マリコ
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桃下結衣
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コメント
15件

夏帆ちゃん、まだホストだと。かわいいね。
ホスト説が強い😆 本当の職業を知った時の夏帆ちゃんが楽しみ〜 しかし、元カレ‼️お別れして正解よ😎
透也さんの考え方が夏帆ちゃんとドンピシャリ✨ お付き合いしたら長続きするよ〜o(^▽^)o🩷 その真逆をいく駿介😱恋愛も仕事も全てにおいて中身が無くて成長してないとは…夏帆ちゃん、早々に見切りつけてよかった❗️全く…空いた口が塞がらんわ👄