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教室のざわめきに、俺はいつも身を縮める。でも、今日は違う。
誰にも迷惑かけないように、声を押し殺して、目立たないようにしようと決めていた。
昼休み。女子が笑いながら話す輪の近くを通り過ぎる。
「……あ、どうも」
声が小さすぎて聞こえないかもしれない。けど、これが精一杯だった。
「何だよ、無理して話しかけてくんなよ」
背後から男子の声。すぐに周りがざわつく。
あいつらの視線が刺さる。
「空気読めよ、気持ち悪い」
俺はそれでも諦めない。
今日こそ、失敗しないように。
数学の授業中、手を挙げて答えを言う。
「ここはこうだから……」
けど、言葉がクラスの空気からズレているとすぐにわかる。
隣の女子が小声で笑う。
「わかってねーくせに喋んなよ」
胸が締めつけられ、呼吸が苦しくなる。
「俺、なんで……なんでこんなことしかできないんだ」
心の中で繰り返す。
放課後、掃除の時間。
みんなで雑談しながら掃除をしている。
「手伝えよ」誰かが言う。
俺は手を伸ばすが、誰も場所を空けてくれない。
無理やり割り込もうとしても、肘で押し返される。
「邪魔なんだよ、消えろ」
声は冷たく、容赦がない。
それでも、俺は必死に頑張っていた。
自分を壊さず、認められたくて。
だけど、どんなに努力しても、
みんなの目には、俺の存在そのものが嫌悪だった。
「お前は汚い。触れたくない」
そういう目に晒されている。
その言葉は、家庭の暴力よりも何倍も痛かった。
俺の中で、何かが壊れていく。
でも、誰にも言えなかった。
声に出したら、もっと壊れてしまいそうで。
だから黙って耐えるしかなかった。