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昼休み。廊下を歩く遥の背後で、数人の上級生が笑い声をあげる。
「おい、“奴隷”、階段上がってみろよ」
「今日のショータイムだ」
腕を掴まれ、逃げる隙もなく引きずられる。階段の踊り場に押し立てられると、同学年の男子が背中をどんと突いた。
「やめろっ……!」
声が震える。だが、抗議の言葉は笑いにかき消される。
「聞いた?こいつ“やめろ”だって。おとなしく突き落とされろよ」
足を払われ、遥の身体は階段を転がり落ちる。硬い段差が背中や肘を打ち、鈍い痛みが骨に響く。呻き声を漏らすと、見下ろす人だかりの中から歓声が上がった。
「ほら、起きろよ、まだ終わりじゃねえぞ」
「犬のくせに寝転がってんじゃねえ」
肩を掴まれ無理やり立たされる。足がもつれ、視界が滲む。
「……やだ、もう……」
その一言も、空気を割く鞭のように嘲笑を引き出す。
「“やだ”だってよ! 可愛くお願いしてるつもりか?」
「ほら、吠えろよ。犬なら犬らしく」
上級生の一人が冷水入りのペットボトルを頭から浴びせる。制服がびしょ濡れになり、震えが止まらない。
「やめて……お願いだから……」
必死に言葉を絞り出すが、返ってくるのは拍手と歓声。
「もっと言え!“お願いだから”って!全校中に響かせろ!」
声を奪うように腕を捻られ、壁に押し付けられる。耳の奥に血がざわめき、痛みと屈辱が混じり合う。
その場を通りかかった教師すら、見て見ぬふりをして去っていった。