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朝の教室は、昨日より少しだけ静かだった。
静か、というより――
「様子を見ている」みたいな空気だった。
誰もはっきりとは何も言わないのに、視線だけがゆっくり動く。
晴翔はそれが嫌だった。
席に着くと同時にスマホが震える。
もう、驚きはしない。
驚かないようになってしまったのが、一番まずい気がしている。
画面を開く。
動画アプリ。
ホーム。
おすすめ欄。
【“一緒にいると距離を置かれる関係”の特徴】
晴翔は、息を止めたまま画面を見つめた。
「……ふざけてんのか」
声は小さい。
でも、手は少し震えている。
「出た?」
横から瀬那の声。
晴翔は何も言わずにスマホを見せる。
瀬那の目が一瞬だけ細くなる。
そして、すぐに視線を逸らした。
「最悪だな」
「何が」
「もう“関係”まで見てきてる」
晴翔は意味が分からないまま聞き返す。
「関係って何だよ」
瀬那は少し黙る。
言い方を選んでいるみたいだった。
「お前と俺がどう見えるか、まで含めて出してる」
「は?」
「距離とか、空気とか、そういうの全部」
その言葉が、やけに頭に残った。
教室の前の方で、ざわつきが起きる。
誰かがスマホを机に置いて、小さく笑っていた。
「これさ」
「また同じの出てるんだけど」
別の声が重なる。
「俺も」
「え、なにこれ」
一人じゃなかった。
二人でもなかった。
気づいた時には、数人が同じ画面を見ていた。
【“一緒にいると距離を置かれる関係”の特徴】
晴翔の背中が冷える。
「なんで……」
思わず声が出る。
瀬那が低く言う。
「共有されてる」
「またそれかよ」
「いや違う」
瀬那は一度だけ首を振る。
「今度はクラスじゃない」
晴翔は瀬那を見る。
瀬那の目は、スマホじゃなくて“教室全体”を見ていた。
「同じ空気を見せられてる」
その時だった。
教室のどこかで、笑い声がした。
軽い、何でもない笑い。
でも、その直後。
「なぁ」
誰かが言う。
「最近さ」
間。
「晴翔と瀬那ってさ」
教室の空気が止まる。
名前が出た瞬間だけ、空気が変わる。
晴翔は呼吸を忘れる。
瀬那は動かない。
「なんかさ」
別の声が続く。
「ちょっと近くない?」
“近くない?”
たったそれだけの言葉なのに、胸の奥がざわつく。
瀬那が小さく息を吐く。
「来るぞ」
「何が」
瀬那は答えない。
代わりに、スマホを伏せた。
ブッ。
晴翔のスマホが震える。
反射で見てしまう。
おすすめ欄。
更新。
【“距離が近いと言われ始めた関係が壊れる流れ”】
晴翔の指が止まる。
瀬那が、画面を見て表情を変えた。
ほんの一瞬。
でも確実に。
「これ、やばい」
「何が」
瀬那は画面を指ささない。
ただ、言う。
「“見られた”時点で進む」
「意味わかんねぇって」
瀬那は初めて、少しだけ声を落とした。
「もう“噂”じゃない」
教室の空気が、さっきよりも一段深くなる。
誰かがまた言う。
「でもさ」
「ほんとにそう見えなくもないよな」
その瞬間。
晴翔の中で、何かが嫌な音を立てた。
違う。
違うはずなのに。
視線が増える。
言葉が増える。
おすすめ欄が増える。
全部が、同じ方向を向き始めている。
瀬那が、晴翔の腕を軽く叩いた。
「今はまだ間に合う」
「何が」
瀬那は一度だけ晴翔を見た。
その目は、いつもより少しだけ近かった。
「離れろって出る前に」
コメント
1件
うわっ…読み終わった直後なんだけど心臓バクバクしてる😭💦 おすすめ欄に「壊れる流れ」が出てきたとこ、まじで背筋冷えた…それって“次”を予告してる感じじゃん?しかもクラス全体が同じ空気見せられてるって、自分だけじゃない怖さが余計に怖すぎる… 「離れろって出る前に」って瀬那のセリフ、優しさなのか警告なのか分かんなくてズルい…!もっと知りたいし、でも知るのが怖いって、これ完全に沼案件ですわ…🥺💔 次回どうなるかすっごい気になる…生きててくれ頼む…!(ヒロイン目線で祈ってる)