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朝というほど明るくはない時間に、真白は目を覚ました。
目覚ましは鳴っていない。外もまだ静かだ。
ただ、横にある体温が近い。
アレクシスは起きていない。
仰向けで、静かに呼吸している。
真白はしばらく、そのまま見ていた。
見ている理由は特にない。
ただ、いる、と思う。
布団の中は暖かい。
暖房は切れている。
人の体温だけで、十分だった。
真白は少しだけ近づく。
触れるほどではない。
ただ距離が縮まる。
アレクシスの呼吸がわずかに変わった。
起きたわけではない。
でも、気づいている感じ。
「……起きてる?」
低い声。
まだ眠い声。
「起きてる」
「早い」
「目、覚めた」
アレクシスは目を開けないまま、少しだけこちらに顔を向けた。
距離がさらに近くなる。
「寒い?」
「別に」
「ならいい」
そのまま数秒。
何も起きない。
真白は布団の中で手を少し動かした。
アレクシスの手に触れる。
指先が当たるだけ。
離さない。
握らない。
ただ触れている。
アレクシスの指が少し動いて、軽く重なった。
それだけ。
部屋は静かだ。
外もまだ静か。
時間は進んでいるはずだが、急いでいない。
「……今日、在宅?」
「午前だけ」
「じゃあ俺、先出る」
「うん」
会話はそれだけ。
けれど、手はまだ離れていない。
数分して、アレクシスが先に目を開けた。
真白の方を見る。
「起きる?」
「もう少し」
「いいよ」
アレクシスは起き上がらない。
急がない。
ただ、そのまま。
真白は目を閉じた。
完全に眠るわけではない。
でも、落ちる直前の深さ。
指先だけが触れている。
それが、なぜか安心だった。
アラームが鳴る前に、
もう一度、目が合った。
「……おはよう」
「おはよう」
声は小さい。
でも、十分だった。