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#読み切り
ドアが開く。
相談者は椅子に座る前に言った。
「昨日まで普通だったのに、急に誰とも話したくなくなる日ある……」
蓮司は椅子を引く。
「全部切りたくなる感じか」
「そう。通知もしんどい。
会話考えるだけで疲れる」
「一人になりたい?」
「なりたい。
でも、完全に一人になると今度は不安になる」
蓮司は座る。
「矛盾してるな」
相談者は苦笑する。
「自分でも分かってる……」
少し間。
「その日って、急に来るように見えて、
実際は溜まってる」
「溜まってる?」
「会話、気遣い、反応、空気読むやつ。
小さい消耗」
相談者は黙る。
「お前、“平気な顔”で通してる時間長いだろ」
「……まあ」
「で、限界だけ急に来る」
間。
「でも周り見ると普通に喋ってるじゃん」
「外からは分からない」
相談者は視線を落とす。
「あと、“話したくない”と“嫌い”を混ぜるな」
相談者は顔を上げる。
「違うの?」
「全然違う」
少し沈黙。
「嫌いなら、回復したあとも戻りたくない」
「……確かに」
「でもお前、数日したらまた普通に戻るだろ」
「戻る」
「じゃあ一時的な停止」
間。
「でも、その期間に距離できそうで怖い」
「だから無理して返す?」
相談者は黙る。
「その状態で会話すると、余計削れる」
「分かる……」
「“返さなきゃ”だけで動いてるからな」
少し静かになる。
「じゃあどうすればいい」
「完全に消えない」
相談者は眉を寄せる。
「え」
「ゼロにしようとするから難しくなる。
“弱く繋いだまま休む”」
「どうやって」
「短く返す。
リアクションだけ置く。
今日は低電力です、みたいな動き」
相談者は少し笑う。
「スマホの省エネモードみたい」
「近いな」
間。
「今までは?」
「元気なふりするか、完全に消えるか」
相談者は小さく息を吐く。
「極端だった」
「中間がない」
少し沈黙。
「あと、お前ちょっと勘違いしてる」
「何」
「“ずっと人と繋がってたい人”が普通だと思ってる」
相談者は黙る。
「人によって、必要な静けさの量違う」
「静けさ……」
「会話で回復するやつもいれば、
一人で回復するやつもいる」
間。
「でも一人でいると、
社会性終わってる感じする」
「そこで自己評価まで下げるな」
相談者は苦笑する。
「やるんだよな……」
「“今日は喋れない日”と、
“人間性”を直結させすぎ」
少し静かになる。
「なんかさ」
「何」
「急に全部切りたくなる自分、冷たいと思ってた」
「冷たいというより、
容量管理が雑」
相談者は吹き出す。
「言い方ひど」
「でも近いだろ」
相談者は笑いながら頷く。
間。
「休む前提で、人付き合い組むか」
「その方が長持ちする」
ドアの前で立ち止まる。
「消えるんじゃなくて、省エネにする」
「それでいい」
ドアが閉まる。
誰とも話したくない日は、
人が嫌になったんじゃない。
“人と接続し続ける回路”が、少し熱を持ってるだけだ。
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