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「なあ、交代しようぜ。俺もやりてえ」
「おー、じゃあ次お前な。ちゃんと深く沈めろよ」
笑い声の中で、別の手が遥の後頭部をつかむ。泡まみれの髪を乱暴に引き寄せ、また便器の水へと押し込む。
「んぐっ……!」
遥の両手が壁を掻くように伸びる。爪のない指先から赤い滲みが水に溶け、薄く広がった。
「おー、血出てるじゃん!」
「やべ、絵になるな」
「ほら、五秒数えて。いっち、にぃ、さん……」
周りが声を揃えてカウントする。水の中で肺が焼けつくようになり、遥の体が痙攣する。
「ごっ、ほっ……!」
引き上げられると同時に咳き込み、水を吐き出す。その背中を別の加害者がモップで叩いた。
「まだ五秒いけんじゃね? 今の三秒くらいだろ」
「次は十秒だな」
「やめて……もう……」
途切れ途切れに漏れた声を、周りはすぐに笑いでかき消した。
「おい、聞いたか? “もう”だってさ」
「まだ始まったばっかだろ」
「よーし、じゃあ罰ゲーム続行!」
誰かが笑いながら洗剤をさらに頭からかける。白い泡が顔を覆い、目にしみ、呼吸が塞がる。
「すすがなきゃな」
また別の手が押さえつけ、容赦なく水へ。今度は二人がかりで頭と肩を抑え、逃げ場をなくす。
「十! おーい、ちゃんと数えろよ!」
「まだ動いてる。ほら、もっと押さえろ!」
「はい、引き上げ!」
荒い息を吐く遥の姿を見て、誰かが満足そうに鼻を鳴らした。
「次どうする? あいつの足、まだ洗ってないだろ」
「そうそう、裸足にして床磨きさせよ」
靴下を剥ぎ取り、濡れたモップを押し付けられる。足の火傷の痕が擦られ、遥は声にならない呻きを漏らす。
「ほら、もっと声出せよ」
「泣けよ、泣かねーのがつまんねーんだよ」
足を踏みつけられ、遥は小さく声を零す。
「……やめて……ごめんなさい……」
それは自分でも聞き取れないほど弱い声だった。
「やっと言ったな。なあ、どうする? 次負けたらこいつ、もっと長く沈めようぜ」
「ゲームにすんのかよ。面白え」
笑い声が広がり、彼らは順番を決め始める。まるで遊びのように、遥の苦痛は回されていった。
「じゃ、俺から」
また手が伸び、頭を掴む。冷たい水面が近づくたび、呼吸が浅くなる。体は自然に震え、喉からひきつった声が漏れる。
「やめ……やだ……」
だが返ってくるのはまたも楽しげな掛け声だった。
「いけー! 押せ押せ!」
「十五秒いけ!」
「がんばれよー、“シャンプー係”!」
水と泡と笑い声の中、遥はただ、何度も沈められ、引き上げられ、また沈められる。
抵抗する力はなく、ただ喉の奥で小さな呻きと、弱々しい呼吸だけが残っていた。